この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





小景 プリンの後は
2015-12-22 16:33:12
テーマ:クロネコ物語





ケータリングじゃなかった。
お鍋だった。

そうね。
ここで他人に任せられない。




サガさんは
仔猫に食器を並べさせ
下茹でした白滝、
野菜に肉をお鍋に入れていく。



仔猫に用意させた簡易コンロに
鍋を移して
仔猫に近寄る前にスイッチを入れた炊飯器から
ご飯をよそる。



二人揃って
いただきます
をして、
後は
いつもの二人だった。



仔猫の苦手なものは
一つもなかったみたい、

よそったものは
全部たべていたもの。



日本にいるような
懐かしい風景なのかしら。

「ねぇ、
サガさん。」

仔猫が呼ぶ。



『何だ?』

狼が問い返す。



「二人で食べられて
なんだか嬉しい。」

仔猫が応える。



『いつも二人だろう。』

鍋から
バランスよく
よそってやりながら
狼が応じる。



「そうだけど……
   いつもは
   サガさんが
   見張ってる感じなんだもの。」

受け取った器を
嬉しそうに覗きながら
仔猫は愚痴る。



『お前がちゃんと食べないからだ。』

狼が応じる。



「今日は
  食べられるものばかりだね。

   ご褒美?」

仔猫の目が輝く。



『今日は泣かしてばかりだったからな。』

狼は
鍋を覗きながら
さらっと
応える。



「また泣いたら
   優しくしてくれる?」

仔猫は
嬉しくて
仕方がない。



『お仕置きするだけだ。

   もっと泣かしてやる。』

狼は目をそらしたまま
応じる。




「……サガさんのお仕置きは
   優しいもの。

   僕、大好きだよ。」


仔猫は
もう止まらない。
さっきまでの不安は
どこに行ったの?



サガさんに
包まれて
消えちゃったのね。

サガさんを
見上げて
安心しきっている。



『………………そんな顔をするな。』

狼は
たまらず
釘を刺す。



「なぜ?」

距離が近い。
すり寄ってる。



『…………何故でもだ。』

なぜ?
なぜ?
とまとわりつく仔猫に
洗った食器を拭かせて
浴室に追い立てる。



「サガさんは?」

と誘う仔猫の前で
バタンと浴室のドアを閉じて
ため息をつく。


教えたのは自分だ。
始めたのも自分だ。
踏み出したことは戻れない。


そうよ。

仕方ない。
そこは
仕方ないんじゃないかしら。


とりあえず
見なければいいでしょ?
自分から見てるんだもの。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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