この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







小景 プリン2つ目
2015-12-22 07:38:06
テーマ:クロネコ物語





仔猫の手から
狼に渡されたプリンが
落ちて

すっと出された
狼のもう一方の手に
キャッチされた。



あ、
と狼を見上げ
狼狽える恋人を

狼は
じっと見詰めている。



『どうした?』

優しく問う。



「ごめんなさい!
   手が、
   手が触れて……。」

ますます狼狽える。
頬から襟元に覗く首筋までが
みるみる紅く染まる。



『俺に触られたくないのか?』

声を暗くしてみせる狼の目が、
いたずらっぽく
光る。



「ち、違うよ!」

幼い恋人は一生懸命だ。
年上の恋人に
訴える。




ふわっと
仔猫を抱き取り
持ち上げると

『わかっている。』

どぎまぎしている仔猫を
狼は優しく受け止める。



そのまま
テーブルに近寄り
下ろしてやり
プリンを置くと、

『食べたら
流しに持ってこい。』

頭を
くしゃっ、
としてやり
夕食の準備にかかる。


手早く作業しながら
狼は仔猫の様子を窺っている。




ふー、
と一息ついて
マグカップを覗けば
もうにこにこしている。


手を合わせて

「いただきます。」

目を閉じる。


ぱくん!
と一口食べては
幸せそうに微笑む。




「おいしかった!」

食べ終えて
仔猫が振り向き、
自分を見詰めていた狼に気付く。



あ、
とまたまた紅くなる。




キッチンから
狼がやってくる。

椅子に小さくなった仔猫は
狼の手に触れられて
カチンコチンに固まった。



あのときのように
狼は膝をつく。

そっと仔猫を抱き寄せ
その腕に包む。



仔猫の体が
ゆっくりと溶け出して
その腕にやすらぐのを、

狼は辛抱強く待った。



『俺を見るとうずくのか?』
狼が
そっと
問いかけ、

また
固まりかける体を
優しく擦る。



『恥じないでくれ。
   俺を欲しがるように

   俺が馴らしたんだ。』



狼が仔猫を哀しげに見上げる。

『怖いか?』



仔猫が首をぶんぶん横に振る。

『優しい子だな、
お前は。』



狼は仔猫を抱きながら
語りかける。

『お前が嫌がることは
   俺にはできない。

   お前が傷つくことも
   俺にはできない。

   二人で生きたいんだ。

   怖くない。
   俺を欲しがってくれ。』



仔猫が
そっと狼の首に手を回した。
息が詰まるほど抱き締められながら
仔猫が囁く。



「怖くないよ。

   僕、サガさんが欲しい。」



えっと、
今夜はケータリング?

まあ
私の分は別だから
構わないけど。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。




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