この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





秘め事の始まり
2015-12-21 07:33:32
テーマ:クロネコ物語





仔猫の目を
サガさんは受け止める。

静かに
黙って仔猫の前に
膝をつき
その顔を仰ぐ。




二人が
ただ見詰める。



『お前を抱きたい。
  許してほしい。』

仔猫が開きかけた口を
狼が
そっと
指で止める。



『お前の体は
   男を受け入れるようには
   できていない。

   俺は
   それを馴らしていく。

    お前の苦痛は
    計り知れない。

    俺に抱かれるために
    何に馴らしていくと思う。

     誰にも見せることのない
     体の隅々まで
    俺の前にさらすんだ。

     男を受け入れるために
     広げられる痛みだけじゃない。

     それが快感になるまで
     俺は馴らしていく。

     上げたことのない声を
     お前は上げる。

     自分が人間だとすら
     感じなくなる。

     お前は男の子だ。
     それは自然の営みじゃない。
     女の子の場合とは違う。

      ただ
      俺に
      抱かれるためだけに
      体から作り変えられるんだ。

       俺もそうだ。

      お前を抱きたいだけだ。

      俺には
      抱かれたお前の顔が
      浮かぶ。

       恐怖に凍りついたお前を
      俺は見ている。

      お前は
      ショックで
      俺に貫かれたまま
     意識を失った。

     その瞬間が
     脳裏に浮かぶたびに
    俺は熱くなる。

     お前に掴みかかり
     哀願するお前を
     貫きたい衝動に駆られる。

     俺は
     そんな自分が
     恐ろしい。

     お前を守りたい。
     それなのに
     お前を抱きたくてたまらないんだ。

     許してくれるか?』

じっと
仔猫は
聞いていた。

聞き終えると
ひざまづいたサガさんに
そっと両手を差し出す。

サガさんに
抱き締められながら
仔猫は応える。

「サガさんといると
   もっと近くにいたくなる。

    近くにいると
    触りたくなるんだ。

    触っていても
   もどかしい。

    サガさんに
    抱かれて
    すごく気持ちがいいときも
    何かが足りなくて
    欲しくてたまらなくなる。

    きっと
    ちゃんとサガさんのものに
    なりたいんだ。

     一つになってしまいたい。
     苦しいのも
     辛いのも
     サガさんと繋がるからでしょ。

    すごくほっとすると思う。
     ああ
     今繋がってるって。

      サガさんと二人で
     生きてるって

      そう感じたい。

      サガさん
      僕を抱いて。」



狼は
そっと囁く。

『準備する。
   待ってろ。

   今度は待たせない。』



仔猫を抱き上げ寝室に向かい
ドアが閉じられた。




啜り泣きが
始まる。

仔猫は
ただ泣いている。

サガさんの声だけが
微かに届く。

『力を抜け。』

『だいじょうぶ。』

『俺を見ていろ。』

『中で感じるんだ。』

『いい子だ。』

仔猫の泣き声に
微かな悲鳴がまじる。

サガさんの哀しげな声が聞こえる。


『許してくれ』

『許してくれ 』

『許してくれ』

『愛している』

……………………。

ベッドの枕元に
小さな平たい丸缶が置かれるようになった。

サガさんの指を数える言葉に
仔猫が頬を染める。

サガさんの見詰める目に気付くだけで
仔猫は羞じらう。

そんな毎日が始まった。




そうね。
確かに仔猫は変わっていく。

サガさんに馴らされて
サガさんを受け入れるために
毎日少しずつ
体から変わっていっている。

二人の秘め事が始まったのね。


サガさん
あなたの若紫は
失敗できないわよ。

あなただけが
その子の世界なんだから。

真っ黒な波に
その子を
拐われないように
大事に胸に抱いていなさい。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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