この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





がまんは 発火を誘発する
2015-12-20 22:02:10
テーマ:クロネコ物語




仔猫がそっと居間を覗く。
自分で起きたのね。

サガさんはキッチンだ。
とことこ近づくと
後ろから抱きついた。




『すぐできる。
   あっちで
   待ってろ。』

   サガさんは
   抱きつかせたまま
   手を止めない。

「ねぇ、
  食べたら
  …………待ってるね。」



仔猫は
小さくそれだけ囁いて
すっと離れた。




で、
朝食だ。


サガさんは
まず
仔猫に
冷蔵庫を覗かせる。



すごいわね。
手作りのプリンが
大きめのマグカップで
冷蔵庫に並んでる。



仔猫がキャーキャーうるさい。



「ありがとう!
   すごい!
   作ってくれたの?

   僕、初めてだよ
   手作りのプリン。」



キラキラお目目で
手を出すと

すっと
サガさんが取り上げる。




『全部食べたら
  食べさせてやる。

  頑張れ。』




で、
朝食の覆いを外す。

今日のメニューは
……いじめかな。
これがホントのお仕置きか。




泣いて食べなかったメニュー
野菜尽くし
3種類。



仔猫は絶句して
サガさんを振り返る。



『プリンだぞ。』

サガさんは
しれっと言う。



自分はさっさと食べ、
コーヒーを楽しみながら
仔猫の観察に入る。




まず
こないだのゼリー寄せ。
パクン!
食べると同時に
じわっと涙が滲んでる。



次が
肉詰めパプリカ。
ポロポロ泣きながら食べる。
中だけ食べようとして

『プリン!』

と言われて
しゃくり上げながら完食。





最後が
なんとも言えない色の野菜スープ。
一気に飲み干して咳き込む。





しっかり見届けて

『よし!
プリンだな。』

とサガさんが立ち上がる。




トン!
と目の前に
憧れのプリンが置かれた。




それでも
仔猫は泣き続ける。




「……僕、プリンはいい。」

ぽつんと仔猫が口を開いた。


「待ってるって言ったでしょ。」


サガさんを
涙でいっぱいの目が見詰める。



見返すのがきつくなるような
一生懸命な目が
ぴたっと
サガさんの目を見詰めてる。



「待ってるんだ。

   僕、
   サガさんが
   待ってろって言うから

   ずっと待ってるんだ。」



もう涙は止まらない。



薬がききすぎちゃうと
副作用が出る。


我慢しすぎて
切れちゃったみたいよ。
食い物の祟りは恐ろしいわね。



サガさん
どうする?

この子を
もう
誤魔化せそうもないわよ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。<


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