この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。




この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。


小景 ヒトは美しい獣ね
2015-12-19 22:17:41
テーマ:クロネコ物語





サガさんは黒の上下に黒
彼は黒の上下に白

二人揃ってのジョギングが
始まった。
サガさんは少し物足りないんだろうけど
彼は頑張るというしね。

カレンダー囲んで決めたことね。
まあ、
よく起きたものよ。





『ペースは俺が作る。
  やたらに速くするな。』


「うん!」


元気にサガさんを見上げる顔の
嬉しそうなこと。

二人とも
こういう姿になると
よくわかる。

その体に無駄なものはないのね。
動くための必要最小限の美


それは
こんなにも優雅だ。
こんなにも心を乱す。

ヒトという名の獣は
なんて綺麗なの。





絡み合うほどに寄り添う
2頭の獣

見上げる白い獣が
絡みつけば

黒い獣はその腕を絡ませ
腰を抱いたまま
その耳に何か囁く。




白い獣が
腰を抱かせたまま
サッと
身を引く。



あら
野生化してる?

きっと睨む豹の目を泰然と受け
すっと白い獣を引き寄せた黒い獣が
覆い被さるように
身を寄せて

もう一度囁く。

「勝ったらプリンだ。」





は?プリン?

白い獣は
目を輝かせる

うん!
と大きく頷いて
にっこり。

二人は出て行ったわ。





で、
戻ってきた。



「プリンだよ!
   約束だよ!

   ラスト200M
   僕の勝ちだよ!」

仔猫が意気揚々と飛び込んできた。





狼のしぶい顔。

『………約束だな。

  だまされた。
 俺の負けだ。』




仔猫は真面目くさって応える。

「嘘じゃないもの。
   ほんとに
   苦しくなったんだよ。

   すぐ治っただけ。
   治ったからダッシュしたんだもの。」





その顔をじっと見詰めて
狼はにこっと笑う。

『この狼少年め。』




シャワー室に
騒ぎは移る。

水音にまじり

最初は

「プリンだよ。」

だの

「やった!」

だの
仔猫の快哉が聞こえていた。



『俺は死にかけたぞ。
   お前が発作を起こしたと思って』

狼の声が
仔猫を静まらせる。




「ご、ごめんなさい。」

水音だけが聞こえる。



『悪い子だ。』

狼の
優しげな声に続いて

壁に何かが押し当てられる
鈍い音



『いい子にしてやる。』

狼の声は
溶けるように甘く優しい。



今日のはお仕置きか。
もう
甘い悲鳴が始まってる。



叱っていいわよ。
常習犯なんだから。

でもね…………お仕置きになってないわよ。



まあ
いいわ

朝食!
朝食さえ間に合えばね。



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