この小説は純粋な創作です。








小景 カレンダーを囲んで
2015-12-18 06:38:35
テーマ:クロネコ物語





テーブルに広げられた12月のカレンダー。


そこに何やら書き込んでいるのは仔猫だ。
サガさんは
一つ一つ仔猫に考えさせている。



気持ちを作るのは 
この子なのよね。

なんやかやで 
年末までは
固まったらしい。



『新年はどうする?』

サガさんが訊ねる。




仔猫は応えられない。
ペンをもったまま
何気ないふうにして問い返す。

「サガさんはどうするの?」

『お前といる。』




ぱあっ、
と仔猫の顔が明るむ。
嬉しくて声が弾む。

「ほんと?」


『ああ。』


「いいの?」


『嫌なのか?』


「嬉しい!!」

座ってなんかいられない。
飛び上がる。
サガさんにかじりつく。




サガさんとお正月よ。
嬉しくって仕方がないわよね。

後ろから
全体重のっけて
抱きついてる仔猫の頭を
手を上げて
ぽんぽんして
サガさんは問う。



『お前はどうしたい?
   日本で過ごすなら
   宿はあるぞ。』



仔猫の頭が上がる。
おそるおそる訊ねる。

「サガさんのお家?」



サガさんが笑い出す。

『いや。
   ツテがある。
   宿だ。

   離れを借りられる。
   誰も来ない。
    二人きりだ。』



仔猫が確かめる。

「ふたりきり?」



狼が保証する。

『ふたりきりだ。』



ぴょんとカレンダーの前に戻り、
赤ペンで書いた。
お正月は
サガさんとお泊まり。




書いては
また振り返る。

「ね?」




サガさんは微笑む。

『そんなに嬉しいか?』




仔猫が応える。

「だって
   サガさんは
   帰らなきゃならないと
   思ってたんだもん。

  そうなら
  邪魔しちゃいけないって
  自分に言い聞かせてたんだ。

   …………ホントにいいの?」



最後は
ちょっと心配そう。
目をいっぱいに開いて小首を傾げている。



狼は虚を突かれて
その顔を見詰める。



隣に座る仔猫に
そっと手を伸ばし頬に触れる。

『この世に二人きりだ。

   お前だけを見ている。
    忘れたか?』



見開いた目に
キラッと涙が光り
ポロッと零れ落ちる。



『おいで。
   もうスケジュールは
   いいだろう。』




仔猫を抱き寄せ
髪をなでながら
そっと囁く。

『浴衣のお前を見るのが
   楽しみだ。

    ……お前は怖くないか?
  俺と二人きりで。』


「なぜ怖いの?」



『また我を忘れるかもしれない。
   日に日にお前に溺れていく。

  お前は俺から逃げられない。
  俺も逃がしはしないだろう。』


狼の恐れが声に滲む。



「怖くないよ。
   逃げたりしない。
   ……………………優しくしてね。」



仔猫は微笑んでいる。
一瞬
狼は息を呑まれる。


『ばか!
  そんな顔で笑うな。』


「だって怖くないもの。」

仔猫が笑い出す。


「サガさんのすることは
   怖くないんだ。

   僕を思ってくれてるって
   知ってるもの。」



狼はため息をつく。
仔猫は胸にあって
くすくす笑っている。



あーあ、
仔猫ちゃん
あなた
そのフワッとしたタートル
上から鎖骨が見えるわよ。

今すぐひっぺがされたいの?


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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