この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








二人で生きること
2015-12-14 00:35:33
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋に創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。




サガさんが彼を呼びにきたわ。

ここで狼になったら
食事はできない。



ぱっと笑顔になろうが、
首に両腕巻き付けられようが、
服も着てなかろうが、
関係ない。



『食事だ。
服を着るぞ。』


抱きつかせたまま、
さっき引き剥いだ服を
手早く掻き寄せる。



サガさんは
仔猫の肩を抱いて
居間のドアを開ける。



テーブルの上は豪華だった。
フルコースじゃないの。

仔猫の目がいっぱいに見開かれる。



その顔を
狼は愛おしげに見詰める。

『お前はよくやった。
   お祝いだ。』



仔猫の肩を抱き
テーブルに向かおうとする。




仔猫は動かない。

ぼんやりと
テーブルを眺めている。




確かめるように
ポツンと言う。

「自分のお祝いって…………
   忘れてた。」



狼は
はっとした。

そして、 
手にある少年を
あらためて見詰める。




この子は
一人取り残されたのだった。

誕生日
クリスマス
新年

家族で祝っていた日を
あの日からは
一人で過ごしてきたのだ。




クリスマスに賑わう街
温かな灯のともる家々

それを横に見ながら
どう過ごしていたのだろう。



浮かんでるの?
あなたの仔猫が泣いている姿が




「すごい!
   僕、

   誰かに…………
   お祝いしてもらうの
   ………………。」



彼は
はしゃいだ声で
頑張ろうとしたけど………
もたなかったわね。

涙で声を詰まらせる仔猫を 
狼が抱き締める。




「ご、
   ごめんなさい。
   …………せ、せっかく
   準備…………」


『俺も
   こんなことは
   久しぶりだ。

   ミチコがいたころは
   何かにつけて
   祝っていた。

   二人の大切を
   二人で祝った。

   お前がいるから
   祝いたいものが見える。

   お前と生きているから
   大切なものも
   みつかる。

   お前は頑張った。
   一緒に祝いたい。』



狼は
仔猫の髪を掻き上げ、
額にキスをし、
しっかりと言った.。

『お祝いをしよう』




涙で一杯の目を上げ、
仔猫は微笑む。

「うん!」




改めて
二人は真面目に
言い交わしたの。

『おめでとう。』

「ありがとう。」




その夜の営みは
優しく甘かった。



愛する者は

腕の中にある。



愛する者は

眸の中に映る。



今という時を
その一瞬を
二人であること
二人でいること



営みはね
それを
二人で
確かめるために
あるの。



仔猫ちゃん
自分の姿がわかる?
誰にも見せたことがないものを
彼に捧げてるのよ。



あられもなく乱されて
あなたは羞じらう。



『いい子だ』

と言われて
あなたは震える。



あなたは彼のものだと 
その羞じらいに
あなたは
感じるからよ。 



あなたの声が
わかってる?

誰にも聞かせたことのない
その
快感にあげる声を。

彼のためだけに
あなたは
あげる。




『いい子だ』

と言われて
切なく
声が高まるのはね、

その声は
あなたは彼のものだと
彼に語りかけるものだからよ。




だからね
狼さん

あなたも確かめなさい。

愛おしくて
愛おしくて
繋がらずにいられない
あなたの思いを。



その子は
感じてるわよ。

あなたのもの

という感覚がくれる
確かなものを。



だって営みはね
二人であることを
二人で確かめるためにあるんたから。




もう
守るだけでは
守れない。



わかってる?
二人が
どれだけ孤独だったか。
どれだけ求めあってるか。

仔猫はもうわかってるみたいよ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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