この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






日常小景 洗って……くれるのね
2015-12-15 07:21:11
テーマ:クロネコ物語






「洗ったげるね。」

え?
今日は寒いんだけど。



彼に抱き上げられる。

あら、
近々と見ると
改めて
感心するわ。

なんて邪気のない笑顔!
参るわね。



部屋はサガさんの管理で
湿度が保たれている。
うちの仔猫は
すぐ風邪を引くんだから。



でもね、
これ、
お肌にも
かなり影響ありそう。


唇が濡れたように
しっとりと赤い。

肌のきめ細かさは
ただ見ていても
目が吸い付くようだわ。

眼福ね。




「手伝ってよ。」

彼は
その笑顔でサガさんを振り返る。



サガさんは
今日は
せっせと書類作成している。

『今はダメだ。』

振り返らない。




彼は
私を抱っこしたまま
ちょっと小首を傾げて考える。



とことこ移動し、
サガさんに向き合う椅子に
座り込む。


私の前肢をテーブルにのっけて
私の頭に頭をのっける。



この猫二段構え、
恥ずかしいわよ。

私がサガさんに頼んでるみたいじゃない。
私はこの件には
噛んでないからね。




この子が
どんな顔してサガさんを見てるのか
想像がつく。



まあ
構わず集中して
一瞥も与えないのはさすがね、
サガさん。



「サガさんて、綺麗。」

……………………。



「サガさんのこと好きな子、
また増えたんだよ。」

……………………。



「すごく可愛いんだ。」

……………………。



「きっと告白されるよ。」

……………………。



「ねぇ、どうする?」



enter 
click
パタン!

『で?
俺はどうしたらいい?』




ふふっ、
と彼は笑うの。

「断ってね。」

なんて可愛らしい声を出すの。




たぶん
今は
上目遣い、
おねだりバージョンのお顔ね。



サガさんが微笑む。

『ばか。
そんなこと聞いてるんじゃない。

今だ。
どうすればいい?』



彼は私の前肢を掴んで振る。

招き猫じゃないんだけど。
しかも
頼んでない。



まあ
付き合ってあげるわよ。

サガさんが私を抱き上げ
彼は横から
なんやかや言いながら付いてきて、

[私を洗ったげる]
というプロジェクトは
楽しく実施された。




サガさんが洗ってくれた。
サガさんありがとう。



終わったところで
邪魔しかしない悪い子は
望み通り
みっちり叱ってもらえて
大満足みたい。


幸せね。
いいんじゃない?



画像はお借りしました。
ありがとうございます。



人気ブログランキングへ