この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





魂が近い二人
2015-12-10 17:59:14
テーマ:クロネコ物語



カチッ 

帰宅した二人が
玄関につくる
一つの影。



仔猫は
狼の胸に頬を寄せ
その心臓の音を
一心に聞いている。


その音を体に受け止め
その音を体に響かせ
一つの魂になろうとしているの?
仔猫ちゃん。



『感動した。
   お前は
   心を動かす力がある。』


「うん。
   サガさんを思う気持ちを
    見てくれた?」



虚を突かれ
狼は仔猫を見下ろす。

じっと見上げる仔猫の顔に
浮かぶ姿があるのね。



『許してくれるのか?』

狼が
静かに問う。



仔猫は応える。

「許すとか関係あるの?

   僕、
   サガさんへの気持ちを
   伝えたよ。 

   今日、
   ああ、サガさんが見てる
   って思って
   サガさんに伝えるんだしか
   考えてなかった。」



サガさんは
静かに
決然と
彼を胸から離した

『食事を作る。
   今日のお前は
   凄かった。 
   俺は感動した。

   風呂に行け。
   マッサージは念入りにするんだ。
   後で見てやる。』



離されて
残された彼は

サガさんが居間に向かう背を
静かに見詰めていた。



食事
マッサージ
日課は進む。



マッサージを終え、
息があがる彼を
サガさんが抱き起こす。



用意しておいたドリンクを飲ませ
そのまま胸に抱いている。



その胸に静まる
愛しい者。

その体温を
その身に感じながら

狼は
守っている。

愛しい者を切り裂く手から
愛しい者を守っている。




透き通る肌
華奢な肢体



あえかな唇を
こじ開けて
熱い喘ぎを聞きたいか。


その衣を引き下げ
白い胸に
唇を這わせたいか。


甘い声があがり、
体はしなやかに捩られる。


その堕ちていく姿を
貪りたいか。




させはしない。

狼は
愛しい者を
守っている。



そっと狼の手に
仔猫の手が重なる。

指が絡められ
仔猫は
甘いため息をつく。

「サガさんの手だ。」




臆病な狼を
宥めるように重ねられた手は
か細く小さい。

「こんなに
  そばにいてくれて
  ありがとう。」




仔猫は囁く。

「僕、
   ただ
   毎日
   こうしていられるだけで
   すごく幸せだよ。」



そっと狼の首に手を回し
その頬に頬を寄せる。

「でもね、
   つらい。

   サガさんと僕、
   すごく近いんだよ。

   魂が近い。 

    こうしていても
    もっと一つになりたくて

    でも
    なれなくて

     切ないんだもの。」




この子は聞いていない。
仕方ない。

あなたの固く目を閉じた
真っ白な顔を見て 
狼があげた咆哮を。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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