この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







愛してる それが大事
2015-12-09 20:26:31
テーマ:クロネコ物語




ベッドに抱き下ろし、
あらためて
体を拭いてやる。



気だるげに目を開けた仔猫は
狼のなすがままに
横たわっている。


そのくせ
狼が寄り添えば
その肢体を絡み付かせる。



その仔猫の髪に指を遊ばせながら
狼は口を開いた。

『すまない。』



訝しげに仔猫が目を上げる。


『俺はお前に触れると
自分を抑えられなくなっている。』



そっと狼の頬に手が伸び、

仔猫は微かに唇を開き
狼のキスを待つ。



瞬時の躊躇いの後、
狼は低く呻き
仔猫に覆いかぶさっていた。



終わらない愛の営み。


が、


それは仔猫の
空気を切り裂くような
声なき悲鳴に中断した。



ひっ…………。
と息を呑む音が
寝室を
まるで別のものに
変えていた。




仔猫の意識が戻ったとき

サガさんは
身仕舞いを済ませ
枕元にいた。




仔猫は
そっと両手を差し伸べる。

サガさんは動かない。
仔猫は察した。




顔を歪めながらも
しっかりと起き上がって
サガさんを抱き締めた。




「僕もだよ。
   サガさんが欲しくて
   たまらない。

   お願い。
   何か言って。」



おずおずと
狼の腕が
仔猫の背に回される。



仔猫は
精一杯の力で
狼を抱き締めた。



『俺はお前を傷付けた。
   もう少しで
   お前を裂いてしまうところだった。

   お前の悲鳴で我に返った。

   止まれなかったら
   お前は壊れていたろう。
   心も体もだ。』 


「やめて!」


『俺は……』



仔猫が狼の唇を塞ぐ。
動かぬ狼の顔を
両手ではさみ

愛しげに
仔猫はキスをおくる。



「僕、
   そんなこと聞きたくない。

   僕を愛してる?

   まだ
   僕を愛してる?

   それだけ教えて。」



狼は仔猫を抱き締めた。



愛している
うん


愛している
うん


愛している
うん


愛している
うん


……………………………………。


終わりのないリフレインを
仔猫が
一つ一つ拾う。



愛している

そうね
二人に必要なのは
それだけよ。



サガさん
恋人に踏み切ったんでしょ。

仔猫もあなたも
愛し合ってることを
忘れないで。



恋人の朝は
切なく
甘い。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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