この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







信じることが扉を開く
2015-12-05 08:21:16
テーマ:クロネコ物語




サガさんの声がする。

『とにかく
   良くなった。

   頑張ったな。』



仔猫が応える甘い声。

「サガさんのお陰だよ。」



ああ、
調子はいいのね。
よかった。




サガさんの携帯が居間のテーブルで鳴る。
もう何回めかしら。

サガさんは携帯を置いて出た。
想定内ということね。




二人が居間に入る。
サガさんは
携帯を取り上げ
また
部屋を出る。




仔猫は
静かに
見詰めている。



戻った
サガさんに抱き締められる。

『待てるか?』

「うん」



仔猫は
サガさんの背にそっと手を回す。

「僕、信じてる。」




時間は流れる。
ケータリングの夕食をとり、
音楽を聴く。



10時になり、
寝室に入る。

カーテンを開ける。
着ていたものを一枚ずつ抜け出て
その体を映す。

そっと
目を閉じて
自分の体を抱き締める。



鏡に映し出される彼。

ふっと顔が仰向く。
微かな声が
唇から漏れる。




サガさんを感じてる。

狼の唇が
うなじに
そして
背に沿って這い下りていくのが
仔猫の震えに見える。



涙が光る。


なんて綺麗。

この子は

恋してるんだわ。



仔猫は
ベッドに入る。
ひっそりと動かず
待っている。



12時を回るころ、
カチッ
微かな音が響く。



そっと廊下を近づいてくる。

寝室に入る。



ベッドから差し伸べられる
細い
細い腕

「おかえりなさい。」




ベッドにある
愛おしいものに
狼は覆いかぶさる。




唇が離れ、
仔猫が甘い吐息をもらす。

『だいじょうぶか。』

狼は仔猫の髪を撫でながら確かめる。



「僕、もう子どもじゃないよ。」

仔猫が
生真面目に応える。



『頼もしいな。
   じゃあ、
   好き嫌いもなくしてくれ。』

いとしげに
からかう狼に
仔猫はピシッと応じる。


「違うよ。
   ちゃんと聞いて!

   もう恋ってわかるし
   愛もわかる。

   今日、
   褒めてくれたでしょ?」



そっと
狼の胸を這い登り
その耳を甘く咬みながら
仔猫は囁く。

「僕、
   もう
   信じられる。
   愛してるしか感じないよ。

   サガさんが抱いても
   僕は壊れない。」



狼は虚を突かれたわね。
まじまじと仔猫を見詰めたわ。

『お預けだ。
  今はな。』


「今って?」


『体を壊したくない。
   裂いてしまう。

  俺が欲しいか?』



一瞬
見詰めあったかと思うと
二人は絡み合った。



口付けを交わしながら
もどかしく脱ぎ捨てられる衣服。
肌を合わせて
より深くなる吐息。




サガさんがベッドサイドの照明を点けた。

はっ、
と身を捩り
前を隠そうとする仔猫を
狼が抑える。 



『お前は俺のものだ。
   お預けの代わりに
   見ておきたい。』



仔猫は綺麗だった。
目も眩む恥ずかしさに
顔を腕で覆っていた。



熱い夜だったわ。
仔猫の声が
甘く切なくて。



これで終わればいいんだけど。
何をしてきたのかしらね。
サガさんは。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。


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