この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。





恋のお勉強
2015-11-24 07:29:13
テーマ:クロネコ物語




目覚める。
わずかなみじろぎに
狼は腕の中に眠る被護する者を
注視する。



うっすらと
開きかける眸は
焦点を合わすものを求めて揺れ
狼の顔に止まった。



一瞬に花が咲く。
白豹が
愛する狼の胸に
頬を寄せ微笑んだ。



「……ありがとう。
  我が儘聞いてくれて。」

白豹が狼の頬に手を伸ばす。




サガさんが
その体をそっと抱き締めると

「サガさんに
   守られてるって…………
   よくわかった。

    怖くないって…………
    よくわかったよ。」


愛する者が
耳元に囁いた。





朝食は
穏やかに進んだ。



彼は
ちょっとサガさんを睨み
ため息をついてみせたけれど
苦手なものも
きちんと食べた。




二人がソファに過ごす時間のことよ。
彼がサガさんに問うたわ。

「サガさんは……
   僕を殺したいって
   思うことあるの?」



ああ
昨日の続きね。

胸に横たわる
しなやかな白豹の背を撫でていた手が
止まる。


『……お前を抱いたとき
  その気持ちは
  生まれるだろうな。』 



白豹は
そっと首をもたげて
狼を窺った。

「…………なぜ?」




狼は
淡々と語ったわ。

『お前が見る者全てに
  嫉妬するだろう。

  お前の全てが欲しくて
  たまらなくなる。

  お前が誰かに
  その笑顔を見せるとき

   いっそ
   二度と俺以外の奴に
   笑えないように
   してやりたくなるはずだ。』




しんと
居間に流れていた時間が
止まってしまったみたいだった。


固まってしまった白豹を
そっと狼は抱き寄せる。



ただ
静かに
腕に包み

その体が和らぐのを
狼は待つ。




静かに時間が流れ出し
胸にある体に
穏やかな呼吸が戻るのを確かめ
狼は言葉を続けた。

『殺したくなる思いは
  恋に狂えば
  人は
 1度はもつものだ。

  それを
   どうコントロールするかだな。』




白豹は
おずおずと問うたわ。

「…………抱くって
  どう違うの?」


『お前の体に
   俺自身を突き立てるんだ。
   俺のものだと。

   お前は痛みにのたうつだろう。 
   その痛みにお前が呑み込まれる姿を
   俺は見る。

    お前の全てを支配し
    突き立てたもので
    お前を狂わせていく。

    お前を完全に俺のものにした
    その感覚に
    俺は地獄に墜ちる。

    もうお前を
    一時も
    手放せなくなってしまうだろう。』



また固まりかけた白豹の頭を
くしゃっ、と撫でて
サガさんは笑った。

『だから
   俺はお前を抱かない。

  お前を守れなくなるのは
  ごめんだからな。』



この子は本当にわかってない。
仔猫の頃から成長してない。



その今やってる羞じらう仕草、
爆弾だからね。

今サガさんを見上げてる無邪気な目、
どんな脅威か
知らないでしょ。 



聞きたがりの仔猫ちゃん
その口
しっかり閉じときなさい。

それでも
狼の胸に体を預けていられるんだから
あなたは幸せよ。



大事にしなさいよ。
その安心を。


画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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