この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。
ターニングポイント
2015-11-21 11:14:02
テーマ:クロネコ物語
「……何か食べたい。」
狼の腕に抱かれて
彼が呟いた。
誰そかれ時の魔法は
生きることが何より大切な
濃密な時間を
二人に与えてくれたわ。
「だいじょうぶ。」
サガさんが口に運ぶスプーンを
断り、
背はサガさんに預けながら
自分で食べ始めた彼。
ゆっくりと
確実に
食べる姿を
サガさんが支えている。
食べ終えて
彼は静かに寝かされた。
「ごちそうさまでした。」
透き通る肌に
削げ落ちた頬は
変わらない。
目ね。
目が変わったわ。
いつも触れていなければ
サガさんを求めて
切ない声をあげる仔猫はいない。
サガさんを見上げる彼は
思慮深い目で
何かを考えているみたい。
片付けて戻ったサガさんは
眠ったらしい彼の顔を
じっと見詰めている。
その顔に引き寄せられるように
サガさんがベッドに身を屈めたわ。
パチッと彼が目を開く。
僅かにたじろいだサガさんだ。
仔猫が笑顔で両手を差し出せば
サガさんは応じる。
サガさんの重さを確かめながら
彼は囁いたわ。
「キスしようとしてたの?」
すっ、
と身を引きかけたサガさんの肩に
か細くなった
彼の手がかかる。
「ごめんなさい。」
切なげな仔猫の表情に
サガさんは止まる。
『大人をからかうな。』
サガさんは
彼の頬を撫で、
額に唇を寄せる。
大人しくキスを受け
サガさんに包まれて彼は
柔らかく身を寄せる。
サガさんの胸を
指でなぞるようにしながら
彼は囁く。
「僕、
僕の一番がわかったよ。
だからね、
サガさんの一番が僕じゃないのも
わかったんだ。」
サガさんは
静かに聞いている。
「サガさんは
僕を抱くなんて
考えてもいないもの。
僕、
サガさんが欲しくなっちゃった。」
胸に遊んでいる指をとらえ
唇を当てて
サガさんは応える。
『俺はお前のものだ。
もう手に入れているものを
どうしたいんだ?』
拗ねたような
もどかしいような
シニカルなような
達観したような
彼の表情は
驚くほど目まぐるしく変わった。
最後にわざとらしくため息をつく
この生き物は?
「…………早く大人になりたいな。
一人前に扱ってもらえるように。」
この仔猫、
知恵がついたわね。
衰弱してて助かるわ。
サガさん
今日は負けてるわよ。
早く追い付きなさいね。
画像はお借りしました。
ありがとうございます。
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2015-11-21 11:14:02
テーマ:クロネコ物語
「……何か食べたい。」
狼の腕に抱かれて
彼が呟いた。
誰そかれ時の魔法は
生きることが何より大切な
濃密な時間を
二人に与えてくれたわ。
「だいじょうぶ。」
サガさんが口に運ぶスプーンを
断り、
背はサガさんに預けながら
自分で食べ始めた彼。
ゆっくりと
確実に
食べる姿を
サガさんが支えている。
食べ終えて
彼は静かに寝かされた。
「ごちそうさまでした。」
透き通る肌に
削げ落ちた頬は
変わらない。
目ね。
目が変わったわ。
いつも触れていなければ
サガさんを求めて
切ない声をあげる仔猫はいない。
サガさんを見上げる彼は
思慮深い目で
何かを考えているみたい。
片付けて戻ったサガさんは
眠ったらしい彼の顔を
じっと見詰めている。
その顔に引き寄せられるように
サガさんがベッドに身を屈めたわ。
パチッと彼が目を開く。
僅かにたじろいだサガさんだ。
仔猫が笑顔で両手を差し出せば
サガさんは応じる。
サガさんの重さを確かめながら
彼は囁いたわ。
「キスしようとしてたの?」
すっ、
と身を引きかけたサガさんの肩に
か細くなった
彼の手がかかる。
「ごめんなさい。」
切なげな仔猫の表情に
サガさんは止まる。
『大人をからかうな。』
サガさんは
彼の頬を撫で、
額に唇を寄せる。
大人しくキスを受け
サガさんに包まれて彼は
柔らかく身を寄せる。
サガさんの胸を
指でなぞるようにしながら
彼は囁く。
「僕、
僕の一番がわかったよ。
だからね、
サガさんの一番が僕じゃないのも
わかったんだ。」
サガさんは
静かに聞いている。
「サガさんは
僕を抱くなんて
考えてもいないもの。
僕、
サガさんが欲しくなっちゃった。」
胸に遊んでいる指をとらえ
唇を当てて
サガさんは応える。
『俺はお前のものだ。
もう手に入れているものを
どうしたいんだ?』
拗ねたような
もどかしいような
シニカルなような
達観したような
彼の表情は
驚くほど目まぐるしく変わった。
最後にわざとらしくため息をつく
この生き物は?
「…………早く大人になりたいな。
一人前に扱ってもらえるように。」
この仔猫、
知恵がついたわね。
衰弱してて助かるわ。
サガさん
今日は負けてるわよ。
早く追い付きなさいね。
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