この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






子どもは知りたがり
2015-11-13 07:22:47
テーマ:クロネコ物語




サガさんの左腕を枕に
その胸に頬を寄せ
仔猫は問う。



「恋人になったら何が変わるの?」



サガさんは
天井を向いたまま応えた。


『苦しくなる。
   欲張りになるからな。』


「欲張り?」


『相手の全部が欲しくなるんだ。

   相手の一番にもなりたい。

    別々の人間が生きているんだ。
   全部は無理だろう?


    だから苦しくなる。

     手に入らないものを欲しがり続けるんだからな。』



「僕、
   サガさんの一番になりたいよ。」


仔猫は
弾んだ声をあげて、
サガさんの胸に張り付いたわ。



『お前は俺の一番だ。
   いつでも
   俺はお前のことを考えている。』



仔猫の頭を撫でて
狼は優しく返したの。



「サガさんは
   僕の一番だよ。
   ……僕、サガさんがいないと
   苦しくなるよ。

   僕たち恋人ってこと?」



仔猫は一生懸命考えながら
聞いてるみたい。



ああ、もう止めときなさいよ。



『一番の意味が違うな。』 

「どこが?」



狼は仔猫の頭を抱き込んで
噛み締めるように
ゆっくり
言い聞かせた。



『俺はお前に熱くなってるんだ。

   おまえが
   熱くなったときに 
   お前もわかる。 』


「……熱く?」


『どうしようもなく
   誰かが欲しくなるときが
   きっと来る。』


「サガさんは
  僕を欲しいの?」


『…………欲しくないといえば
  嘘になる。

   ただ一番なくしたくないものがある。』


「なくしたくないもの?」


『お前の笑顔だ。

  お前に傷一つつけたくない。

  お前が泣いていたら
  涙を流させたものが許せない。

  お前がいつも笑っていられるように
したい。

   俺はお前を愛することを覚悟したんだ。
   どうしようもなく
    お前が愛しい。 

   お前を守る。
   それは誰にも譲らない。
   そう覚悟したんだ。

    お前も
    いつか誰かを欲しくなる。
    そういうことだ。』



そっと頭をもたげ
狼の腕を抜けて
仔猫は言ったわ。



「僕、
  サガさんが望むことをしたい。」


『…………ばか。

   俺を地獄に堕とすつもりか?』 



仔猫のおでこをつついて
狼が笑った。



「え?」


『そんなことを
    誰にも言っちゃダメだ。

    お前を抱きたがってる奴は
    巨万といるんだぞ。』


「サガさんにしか
    言わないよ。」



小首をかしげて自分を見下ろす
仔猫の肩を抱き
狼は
きっちり言い渡したわ。



『お前が欲しくなった奴に言うんだ。
   いつか
   熱くなったときに
   お前にもわかる。』


「でも……」

『もう寝ろ。 
   お前が寝るまで見ていてやる。
    明日は休みじゃないんだぞ。』



なんてことすんのよ?!

サガさんが 
言い終わったその口に
仔猫が唇を押し付けた。



「キスしちゃった」



ふふっ、
と笑って布団に潜り込み
サガさんの胸にかじりついて寝る仔猫ちゃん。


あんた!
やっていいことと悪いことがあんのよ!!
子どもはサッサと寝なさい!!






画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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