インフルエンザ薬は4つありますが、まず投与経路が大きく違います。タミフル®は内服薬でリレンザ®、イナビル®は吸入薬、ラピアクタ®は点滴薬です。今回はもう1個→約2年前よりの新薬も紹介を致します!

ゾフルーザ錠(バロキサビル マルボキシル錠)10m・20m

効能・効果

A型インフルエンザウイルス感染症又はB型インフルエンザウイルス感染症。

<効能・効果に関連する使用上の注意>
1.抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、本剤の投与の必要性を慎重に検討する。
2.本剤の予防投与における有効性及び安全性は確立していない。
3.本剤は細菌感染症には効果がない。


用法・用量

1.成人及び12歳以上の小児には、バロキサビル マルボキシルとして40mgを単回経口投与する。但し、体重80kg以上の患者にはバロキサビル マルボキシルとして80mgを単回経口投与する。
2.12歳未満の小児には、次の用量を単回経口投与する。
1).体重40kg以上:バロキサビル マルボキシルとして40mg。
2).体重20kg以上40kg未満:バロキサビル マルボキシルとして20mg。
3).体重10kg以上20kg未満:バロキサビル マルボキシルとして10mg。

<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤の投与は、症状発現後、可能な限り速やかに開始することが望ましい[症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない]。

ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)は、日本の塩野義製薬株式会社が創製した抗インフルエンザ薬です。

単回経口投与により優れた効果を発揮する抗インフルエンザ薬の開発を目的に、2015年から臨床試験を開始。有用性が高い薬剤であることから、先駆け審査指定制度の対象品目に指定され話題となりました。2017年10月に製造販売承認申請が行われ、2018年2月に製造販売承認を取得。販売は2018年3月でした。

ゾフルーザは、ほかの抗インフルエンザ薬と同様に、成人および小児のA型またはB型インフルエンザウイルス感染症患者に用います。既存薬は細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを防ぐことで効果があらわれます。一方でゾフルーザは、細胞内でウイルス自体の増殖を抑制する仕組みをもつことから、より高い効果が期待できると考えられているのです。

臨床試験において体内からインフルエンザウイルスが排出されるまでの時間は、タミフルが72時間に対し ゾフルーザは24時間でした。


タミフル®は、投与経路が内服(口から飲む)ということが特徴です。1日2回、5日間内服します。副作用としては消化器症状が特徴的であり、下痢や腹痛が起きます。小児では中枢神経症状が出る可能性があります。ただし、中枢神経症状が出なくてもインフルエンザ脳症が起こる可能性があります。タミフル®を飲んでいても飲んでいなくても、インフルエンザになった子どもは、注意してみてあげることが必須です。

リレンザ®は、吸入薬であることが大きな特徴です。1日2回、5日間吸入します。吸入薬であるため、気道の刺激作用がある可能性があります。呼吸器関連の基礎疾患がある場合には注意が必要で、肺炎合併症例で吸入の効果が期待できない場合には使用できません。

イナビル®は、長期作用型なので最初に1回吸入するだけでよい薬です。しかし、リレンザ®と同じく吸入剤のため気道の刺激作用がある可能性があります。呼吸器関連の基礎疾患がある場合には注意が必要で、肺炎合併症例で吸入の効果が期待できない場合には使用できません。

長時間作用型の薬は1回だけ吸入すればよいので、とても簡単な薬に思えますが、これは一面的な考え方です。もし副作用が出た時にはどうなるのでしょうか? 長期作用型は諸刃の剣で、副作用が出てしまったときには、利点に思えた「長時間作用型」は、そのまま欠点となって返ってきます。つまり、副作用すらも長時間作用となってしまうのです。

また、イナビル®は比較的新しい薬です。新しい薬には「予期せぬ副作用」があるという問題もあります。古い薬であれば副作用情報がすべて分かっていると考えられますが、新しい薬については何が起こるのかもどう対応するのかも分からないのです。予期せぬ副作用というのは経験がないので、とても怖いものです。自分はよっぽど希望がない限りはイナビル®を使いません。

非常にシンプルな話になりますが「分からないことは怖い」のです。たとえばペニシリンではアナフィラキシーショックになることがあります。それでも、これはきちんとした知識と体制があれば十分に対応することができます。

ペニシリンのアナフィラキシーショックは怖いものですが、どれくらいの確率で起きて、どのように対応すれば良いのかが分かっています。よく分からないものこそが怖いのであって、きちんと予測できて対処できるものはそれほど怖くはない。「怖さ」というものはそのように解釈します。

イナビル®の副作用が起きたときにはどうするのか? 比較的新しい薬ですから、何が起きるか予測がつきません。半減期が長く、副作用も長時間型になる。このようなことこそが「怖い」と考えることができます。

ラピアクタ®は点滴薬です。日常的に用いる薬ではありません。一般的には入院で、重症化したときや高病原性鳥インフルエンザに使うものと考えらえます。そもそも、抗インフルエンザ薬が必須ではない中で、外来で点滴の抗インフルエンザ薬を投与する必然性は全くありません。特に子どもにとっては注射をされるのは痛いです。つらい処置は最低限にしなくてはなりません。鈴木晴英