今回のイヤホンはまだなくしてません、

鈴木亮平です。

さてさて、公開中の『ふたたび ~Swing Me Again~』は、神戸が舞台です。
塩屋監督は、神戸を選んだ理由に、日本のジャズ発祥の地であるということと、もう一つ、おじいちゃんの再生と神戸の街の再生を重ねあわせたかったからだと語っています。


16年前の今日、俺は小学校6年生でした。

二段ベッドの下で寝ていた俺は、まずゴーという大きな音で目を覚まし、それから間髪入れずに衝撃が襲ってきたと記憶しています。

震災というとどうしても悲劇ばかりが報道されがちですが、誤解を恐れずに、正直に言うと、俺の中には震災についての悲しい記憶がほとんどありません。

つまり、俺は幸運だったし、子供だったし、両親が小さい俺たちを悲惨な側面から隠してくれていたんだろう。

そして俺の目には、倒壊した建物や高速道路が焼きついているのと同じように、コンビニの「自由に商品持ってってください」という貼り紙や、井戸を開放してくれていた友達の家や、全国からの救援物資や、子供部屋に飛び込んできてくれた父親のシルエットなんかが焼きついています。

もちろん、悲劇はすぐ近くにもたくさんありました。

けれども同時に、人のたくましさと優しさを感じられたのも震災だったんじゃないだろうか。

芝居で誰かを演じるときにも、人間のそういう複雑さを忘れないことが人間に対する尊敬の一つなんじゃないかと感じてます。


電車が復旧した直後、「これだけはちゃんと見て覚えておけ」と父に車窓からの景色を見せられた。

父や母は、あの風景を見てどう思ったんだろうと、今になって思う。


16年目の今日、震災で亡くなられた方々のご冥福と、残された方々の悲しみが少しでも癒されることを、心からお祈り申し上げます。