初めて会った時のコトは今でも覚えている。

デビューしたばかりの時。
新年のプロレス大賞授賞式だ。
現在のプロレス大賞は年末に行われているが、その昔は毎年1/4にやっていたのだ。

色々と授賞式が進み、歓談タイムになった時だった。
当時プロレス団体は「新日本プロレス」と「全日本プロレス」しかなく、ようやく「新生U.W.F」が出来たばかり。
その年の授賞式は新日本と全日本だけが参加していた。

オレ達若手レスラーは、ワッと料理に群がりワイワイと食べている時に…一人の男が話しかけて来た。

それが三年連続M.V.Pを獲得した「天龍源一郎」



「おっ!鈴木みのるだ!週プロで見たことあるよ」
デビューしたばかりの新人にしてみたら、もの凄く雲の上の人から声をかけてもらった。
続けて…

「お前ナマイキなんだってな(笑) 雑誌で見た時も思ったけど、ほんと生意気そうな顔してるなぁ」

あ…はあ…


これがオレと天龍源一郎の初対面の会話(笑)




次に会ったのが、それから数年後。。
新日本~新生U.W.F~藤原組と渡り歩いていた時だ。
当時、天龍さんが社長をしていたSWSのパーティーだった。

藤原組とSWSは業務提携関係にあった為に同じパーティーに出席した。
その場の雰囲気に馴染めないオレ達を見かねてビール片手に近寄って来た。
そして…
「まぁ、そんな恐い顔しないで飲めよ」
オレは即座に反応し、断った。
「イイから飲めよ」
いや、車で来ているので…
「置いていけよ」
それはムリです。明日も練習あるんで。
「なに?オレが酒を注いでいるんだから飲めよ」
いえ、いりません。
「そんなに練習が大事か?オレの酒と練習どっちが大事だ?」
練習です(即答)
「チッ…もうイイ…じゃあ帰れよ!」
あ、言われなくてもツマラナイので帰りますよ。
「あ~帰れ帰れ!」
か・え・り・ま・す・よ!

バンッとテーブルを叩いてふてくされて帰ったオレ。。。

当時23歳。。。






まぁ、それから色々あり、全く会うことも無くなった。





それがなんの因果か、再び出会うことに。






2003年にプロレスに戻って来たオレは、
そのまま2004年1月4日開催の新日本プロレス東京ドーム大会に出場した。

まぁ、控室はフリーの選手…オレ…高山…天龍さん…健介…などなどが一緒だった。

そこで10数年ぶりに天龍さんと再会したオレは挨拶に行った。
昔じゃあ考えられないが、その時に何故か挨拶に行きたくなった。
そこで10数年ぶりに言葉を交わした。。

オレが近寄って行くと、もの凄く固い表情だった。
そりゃあ、そうだ。

酒の席で酒を勧められて「いりません」と断るあの時のガキが今更なんの用事だ?と思って当然だ。

そう受け取られるのもわかっていたが、今ちゃんと話しをしないとイケナイと思ったのだ。



二~三の言葉を交わした。
ペコリと頭を下げたオレをみてニコッと笑った。




そして「鈴木みのる!オレはずっとお前らのコトを見てたよ!アレからずっと見てたよ!これからよろしく!」










思いがけない言葉に…ハッとした。









自分がスゲ~小さく思えた。




なんか今までのオレ…

ダセ~…

ガキだ…











その後、新日本内で同じ境遇だった「オレ」「健介」「高山」「天龍」は外敵四天王と呼ばれ、
ついでに「外敵軍」なんてグループまで始めちまった。

ホテルでオレがヒザが痛いなんて言ってると電話をかけて来てくれた。
「ちょっとオレの部屋へ来いよ」
なんだろ?と思いながらドアをノックすると…

片手にはヒザ用サポーター。

「これ、けっこうイイから使えよ。こんなオレに同情されてイヤかも知れないけど。」

ありがとうございます…と素直に受け取った。



接すれば接するほど、背中がデカく見えた。




こんなオレの為に…








そういえば、今のオレのプロレスに大きな影響を与えてくれた一言がある。

オレは天龍さんが他の選手と話している時に隣にいた。
その選手が試合でこんな事をやりたいと天龍さんに話していた時だった。

「おい、いいか?そんなのお前がやりたいだけじゃないか!いいカッコしたがってるだけじゃないか!プロレスは客が何を観たいのか?が一番大事なんだ。お前が勝ちたいからと言ってスモールパッケージをする…そんなの誰も觀たくないんだよ。客が観たいのはお前が全てをさらけ出して殴り合う姿が見たいんだよ。客はお前にソレを期待してるんだ。それがわからないのか?そんなので勝ったって誰もお前を認めない。客の望むもので勝たなきゃダメだ。お客がいるからプロレスなんだ。。。」



オレにとって衝撃的な言葉だった。
プロレスをやってきてそんな発想は無かった。


そういえば…
高山とドンフライがPRIDEで殴り合った試合があった。
あの時の話を高山に聞いた時も同じ事を言っていた。
「あのカタチになって逃げたらプロレスラーじゃないじゃん!客がオレにアレをやらせたんだよ。」って。
同じだ。








しばらくして、雑誌の対談があった。
アレは週刊ゴングだったと記憶している。
オレ、健介、天龍…
場所は天龍さんのお店「鮨処・しま田」

高山が脳梗塞で倒れ、三人になった外敵軍。
そこで対談となったのだが…


酒を勧められた。
オレはそこであの時ののことを思い出した。
そう、ガキの頃に勧められた酒を断り、
ふてくされて帰った日のコトを…。

「今回は断りません。とことん行きます!」


そう宣言してグビグビと酒を飲んだ。
もうどれ位飲んだかわからない位に飲んだ。



ま、そこで事件を起こしてしまうオレ(笑)





外敵軍とか外敵四天王とか呼ばれていたが、オレには他の人にコンプレックスとジェラシーがあった。
1人はミスタープロレスと呼ばれ…
1人はプロレス界の帝王と呼ばれ…
1人はタイトルを取りまくり…

オレだけなんにも無い…



なのに一括り。


焦り、
ジェラシー、
コンプレックス、
でもみんなオレに優しくする…
「鈴木はさ…」
「でも鈴木はこんなにスゴくて…」






んあああああああ~~~~!




溜まりに溜まっていた。
それはもちろん、自分自身に対して。







周りにプロレス記者もたくさんいて…
他の客もいて…
でも…
その席でその全てをブチまけて…





なぜか結局、殴り殴られ(笑)…





お開きになった。。。














次の日に二日酔いの中、目覚めてからボーっと考えた。
考えた。


ウジヴジ…





ええええいっ
ままよ!






「会いたくない!」という天龍さんのところに無理矢理押しかけた。

一通り話しをしてベコリと頭を下げた。


すると…大爆笑!





奥さんも一緒に大爆笑!








ワッハッハ~と笑う天龍さん。
横で奥さんが「長いこと天龍のそばにいるけど、酔っ払って天龍にケンカ売って殴り合いして次の日にケロっと謝りに来たのはアンタが初めてだよ。アハハハハ~~もうイイよ!」

なんだかデカかった。。。







それから試合で対戦すると…
こっちが一発殴ると二発返してくる。
三発殴ると四発殴り返して来る。
こんなオヤジは初めてだ。

正直、レジェンドと呼ばれている人は数多くいるが、いくつになってもオレ達と同じ目線でやり返してくるのはあまりいない。

これだけやり返して来るのは「藤原喜明」と「天龍源一郎」だけである。







昔世話になったとか、可愛がられたという選手はいっぱいいるだろうけど…
こんな不思議な関係を持っているのはオレぐらいであろう。。。













そう、あれは昨日だ。
天龍プロジェクト代表をしている娘さんから連絡をもらった。
「今年11月を持って、天龍源一郎は引退する運びとなりました。。」







ふぅ~…







空を見上げて大きく息を吐いた。













そろそろだなとわかっていたけど、
そんなにビックリしなかったけど、
なんとなく…



ふぅ~~~…




と、息を吐いた。














男のケジメ。

ついにつける時が来たんだな。

間違いなく、今のオレのプロレスに
大きな大きな影響を与えてくれた。

















おつかれさまでした…








…は、ま~だまだ言わねぇよ!
11月までは現役だからなっ(笑)











プロレスにひとつもやり残したことは無い!
…そう言ったらしい。

オイッ、ちょっと待て!


オレはアンタにあるぞ!







まだ時間はある。。。




「もう一度、オレと闘え!!!」





それがゴールを決めた「風雲昇り龍」への
オレの贈る言葉だ。。。
























カミナリが鳴ると「おおおっ!テンリューだ!」と子供の頃はしゃいでいたのが懐かしい…な、


無事に棚卸も終わり、お宝放出状態です。本日も24時間営業中!ネットショップだから当たり前と言うなっ(笑)