中学生の時はオレは剣道部だった。
小学校からずっと剣道をやっていたからだ。
暑い夏の日も、寒い冬の日も、竹刀を振っていた…。
アレは小学2年生のころ。
ふらっと日曜日に自分の通っていた平沼小学校にひとりで遊びに行った時のこと。
体育館で何かやっていた。
中を覗くと棒を持って防具をつけて闘っている。
「なんなんだろ、これ?」
当時もちろん剣道なんて見たことない。
それはそれは不思議な世界。
8才だったオレの目には、もう「特撮映画」の様にすら映っていた。
すると一人の少年がこっちへ駆け寄って来た。
「あれ?みのるじゃん!どうしたの?」
同じクラスの「通称・ガンモ」と呼ばれていた少年だった。
いつも一緒に遊んでいる友達が「棒を持って闘うヤツ」をやっていた。
突然それが近くに来た気がした。
次の週も観に行った。
その次の週も観に行った。
何回も…何回も何回も観に行った。
正座でおじぎをして始まり、
正座でおじぎをして終わるまでずっと観ていた。
「か、かっこいい…」
ふつふつとオレの中に芽生えて来た心。
「ボク、これやりたい!」
自宅で寝そべって競馬中継を見ていたオヤジに切り出した。
「あの、おとうさん…ボク小学校でやっている剣道をやってみたい。あ、あの、今急に思ったんじゃないんだ。毎週学校に観に行ってずっとやりたいと思ってる。どうしてもやりたい!」
オレの話をじっと黙って聞いていたオヤジがしばらくして口を開いた。
「オマエは思った事を、なんでもそうやって口にする。後先考えないんだな。すぐに口にして、すぐに手に入れて、最後はすぐに飽きてしまう。今までそんなのばっかりじゃないか。もし本当にやりたいのなら、一年間考えろ。今日は9月の3日だから一年後にまた言ってこい。気持ちが変わらなかったらやらせてやる。」
この日は地元のお祭りだった。
祭り囃子が聞こえていたのを覚えている。
小さな子供に条件出したオヤジ。
真意はわからないが、確かにオヤジの言う通りの子供だったので(照)…
きっと「こんな風に言えば諦めるだろ…」とでも思ったのだろう。
母親もオヤジに同調してたもんな。
「どうせアンタは…」とか
「タダじゃ出来ないのよ?」
「道具だって高いのよ?」
…色々言われた。
ウチの母親らしい。
それから家族の話題に剣道が出て来る事は無かった。
オレの口からも出てこなかった…。
その後行ける時は常に小学校の体育館へ行き、
窓越しに練習を観る日が続いた。
しばらくしていつもの様に観ていると一人のオジイチャンが近寄って声をかけて来た。
「君はいつもそこから観ているね。剣道やりたいのかい?…おや?君は酒屋のミノルクンじゃないか?」
声をかけて来たのは同じ商店街の大村薬局のオジイチャン。
「えっ?大村のじいちゃんもやってるの?」
「うん、そうだよ。私は子供の頃からずっとやっているんです。もっと近くで観たら良い。中へお入り。」
言われるままに中に入る。
他の生徒さん達と同じ様に正座で見学。
一通り練習が終わり、正座でおじぎ。
オレも見よう見まねで正座でおじぎ。
他の先生が色んな話をした後に、ひとりの先生らしき人が言った。
「それでは最後に館長から一言お願いします。」
ん?
カンチョー?
だれが?
だれが館長?
足のしびれに耐えながらそんな風に思っていると、
大村のじいちゃんが話し始めた。
「みなさん、剣道は剣の道と書きます。剣とは人を殺す事が出来ます。逆に人を生かす事も出来ます。どうすれば良いのか、何が正しいのか。コレを日々考えながら剣を振る。これが剣の道、剣道です。今日は小さなお客さんが来ました。お客さんも一緒に聞いて下さい。みなさん、これからも自分がどうすれば良いのか、何が正しいのか?自分で考え、自分で答えを出して下さい。それがアナタ達の答えであり、正解なのです。たとえどんな結果になったとしても、それが正解なのです。だから剣道の竹刀はまっすぐに振るのです。。。」
こんな話だった。
忘れもしない、一番最初の剣の道の話がこれだった。
まだ小さかったオレに強烈な印象を残した。
それから一年後…
小学三年生になったオレは9月3日を待った。
何故この日付を覚えているのかというと、9月の3~5日は地元平沼にある水天宮という神社のお祭りがあるから忘れないのだ。
9月3日になり、お祭りの用意で大忙しのオヤジを捕まえ切り出した。
「おとうさん、あの、一年前の約束覚えてる?」
「ああ~?やくそく~?」
「うん、ボクが剣道やりたいって言ったら一年後にもう一回言ってこいっておとうさんが…そしたらやらしてやるって…去年の9月3日から一年たったんだけど…」
「……」
「ぼく、どうしても剣道がやりたい…です。」
「……」
無言でオレをジッと見るオヤジ。
横から母親が口を挟んで来た。
「あんた、まだそんなコト言ってるの?今日はお祭りの支度で忙しいんだから、あっちに行ってな!」
今まで無言でオレをジッと見ていたオヤジが口を開いた。
「うるさいっ!オマエは黙ってろ。コレはオレと実(本名)がした男と男の約束だ。」
「でも…」
食い下がる母親。
「口を挟むな!」
「は、はい…」
うるさい母親を向こうへ追いやり、そしてニコッと笑いながら話し始めた。
「よく覚えていたな。それが男だ。ヨシわかった。やらしてやるから、ガンバレ。」…
それから15才にプロレスと出逢い目指し始めるまで、
来る日も来る日も竹刀を振った。
そんなに特別強い道場でもなかったし、オレも特別強い選手じゃなかった。
だけどこの時に教わった「剣の道とは?」という教えは今も心の中に刻み込まれている。
自分がどうすれば良いのか?
何が正しいのか?
自分で考え、自分で答えを出す。
それが自分の答えであり、正解である。
たとえどんな結果になったとしても、
それが正解なのです…。
まだ八つだった幼い少年の心に刻まれた剣の道は、
今もなお胸の真ん中にある。
例え他人に「世界一性格が悪い男」と呼ばれても、
「コレがオレだ!」と胸を張って言える。
今日も誰かに何を言われても、
オレの中でまっすぐに剣を振っている。。。
もうすぐ「バガボンド37巻」が出ると聞き、そんな昔の事を思い出し書き出してみた、
鈴木みのるのオフィシャルグッズショップ
「パイルドライバー」
本日は大阪でキンプロイベント。スタッフにもまだ言っていないが、女性限定条件付きでちょっとしたじゃんけん大会でもやろうかと思っている。条件は…年齢問わず。ただし身長が150~160くらいはあること。MかLが着れる事。顔出し写真公開OKな事。などなど。それじゃ、またあとで。
小学校からずっと剣道をやっていたからだ。
暑い夏の日も、寒い冬の日も、竹刀を振っていた…。
アレは小学2年生のころ。
ふらっと日曜日に自分の通っていた平沼小学校にひとりで遊びに行った時のこと。
体育館で何かやっていた。
中を覗くと棒を持って防具をつけて闘っている。
「なんなんだろ、これ?」
当時もちろん剣道なんて見たことない。
それはそれは不思議な世界。
8才だったオレの目には、もう「特撮映画」の様にすら映っていた。
すると一人の少年がこっちへ駆け寄って来た。
「あれ?みのるじゃん!どうしたの?」
同じクラスの「通称・ガンモ」と呼ばれていた少年だった。
いつも一緒に遊んでいる友達が「棒を持って闘うヤツ」をやっていた。
突然それが近くに来た気がした。
次の週も観に行った。
その次の週も観に行った。
何回も…何回も何回も観に行った。
正座でおじぎをして始まり、
正座でおじぎをして終わるまでずっと観ていた。
「か、かっこいい…」
ふつふつとオレの中に芽生えて来た心。
「ボク、これやりたい!」
自宅で寝そべって競馬中継を見ていたオヤジに切り出した。
「あの、おとうさん…ボク小学校でやっている剣道をやってみたい。あ、あの、今急に思ったんじゃないんだ。毎週学校に観に行ってずっとやりたいと思ってる。どうしてもやりたい!」
オレの話をじっと黙って聞いていたオヤジがしばらくして口を開いた。
「オマエは思った事を、なんでもそうやって口にする。後先考えないんだな。すぐに口にして、すぐに手に入れて、最後はすぐに飽きてしまう。今までそんなのばっかりじゃないか。もし本当にやりたいのなら、一年間考えろ。今日は9月の3日だから一年後にまた言ってこい。気持ちが変わらなかったらやらせてやる。」
この日は地元のお祭りだった。
祭り囃子が聞こえていたのを覚えている。
小さな子供に条件出したオヤジ。
真意はわからないが、確かにオヤジの言う通りの子供だったので(照)…
きっと「こんな風に言えば諦めるだろ…」とでも思ったのだろう。
母親もオヤジに同調してたもんな。
「どうせアンタは…」とか
「タダじゃ出来ないのよ?」
「道具だって高いのよ?」
…色々言われた。
ウチの母親らしい。
それから家族の話題に剣道が出て来る事は無かった。
オレの口からも出てこなかった…。
その後行ける時は常に小学校の体育館へ行き、
窓越しに練習を観る日が続いた。
しばらくしていつもの様に観ていると一人のオジイチャンが近寄って声をかけて来た。
「君はいつもそこから観ているね。剣道やりたいのかい?…おや?君は酒屋のミノルクンじゃないか?」
声をかけて来たのは同じ商店街の大村薬局のオジイチャン。
「えっ?大村のじいちゃんもやってるの?」
「うん、そうだよ。私は子供の頃からずっとやっているんです。もっと近くで観たら良い。中へお入り。」
言われるままに中に入る。
他の生徒さん達と同じ様に正座で見学。
一通り練習が終わり、正座でおじぎ。
オレも見よう見まねで正座でおじぎ。
他の先生が色んな話をした後に、ひとりの先生らしき人が言った。
「それでは最後に館長から一言お願いします。」
ん?
カンチョー?
だれが?
だれが館長?
足のしびれに耐えながらそんな風に思っていると、
大村のじいちゃんが話し始めた。
「みなさん、剣道は剣の道と書きます。剣とは人を殺す事が出来ます。逆に人を生かす事も出来ます。どうすれば良いのか、何が正しいのか。コレを日々考えながら剣を振る。これが剣の道、剣道です。今日は小さなお客さんが来ました。お客さんも一緒に聞いて下さい。みなさん、これからも自分がどうすれば良いのか、何が正しいのか?自分で考え、自分で答えを出して下さい。それがアナタ達の答えであり、正解なのです。たとえどんな結果になったとしても、それが正解なのです。だから剣道の竹刀はまっすぐに振るのです。。。」
こんな話だった。
忘れもしない、一番最初の剣の道の話がこれだった。
まだ小さかったオレに強烈な印象を残した。
それから一年後…
小学三年生になったオレは9月3日を待った。
何故この日付を覚えているのかというと、9月の3~5日は地元平沼にある水天宮という神社のお祭りがあるから忘れないのだ。
9月3日になり、お祭りの用意で大忙しのオヤジを捕まえ切り出した。
「おとうさん、あの、一年前の約束覚えてる?」
「ああ~?やくそく~?」
「うん、ボクが剣道やりたいって言ったら一年後にもう一回言ってこいっておとうさんが…そしたらやらしてやるって…去年の9月3日から一年たったんだけど…」
「……」
「ぼく、どうしても剣道がやりたい…です。」
「……」
無言でオレをジッと見るオヤジ。
横から母親が口を挟んで来た。
「あんた、まだそんなコト言ってるの?今日はお祭りの支度で忙しいんだから、あっちに行ってな!」
今まで無言でオレをジッと見ていたオヤジが口を開いた。
「うるさいっ!オマエは黙ってろ。コレはオレと実(本名)がした男と男の約束だ。」
「でも…」
食い下がる母親。
「口を挟むな!」
「は、はい…」
うるさい母親を向こうへ追いやり、そしてニコッと笑いながら話し始めた。
「よく覚えていたな。それが男だ。ヨシわかった。やらしてやるから、ガンバレ。」…
それから15才にプロレスと出逢い目指し始めるまで、
来る日も来る日も竹刀を振った。
そんなに特別強い道場でもなかったし、オレも特別強い選手じゃなかった。
だけどこの時に教わった「剣の道とは?」という教えは今も心の中に刻み込まれている。
自分がどうすれば良いのか?
何が正しいのか?
自分で考え、自分で答えを出す。
それが自分の答えであり、正解である。
たとえどんな結果になったとしても、
それが正解なのです…。
まだ八つだった幼い少年の心に刻まれた剣の道は、
今もなお胸の真ん中にある。
例え他人に「世界一性格が悪い男」と呼ばれても、
「コレがオレだ!」と胸を張って言える。
今日も誰かに何を言われても、
オレの中でまっすぐに剣を振っている。。。
もうすぐ「バガボンド37巻」が出ると聞き、そんな昔の事を思い出し書き出してみた、
鈴木みのるのオフィシャルグッズショップ
「パイルドライバー」
本日は大阪でキンプロイベント。スタッフにもまだ言っていないが、女性限定条件付きでちょっとしたじゃんけん大会でもやろうかと思っている。条件は…年齢問わず。ただし身長が150~160くらいはあること。MかLが着れる事。顔出し写真公開OKな事。などなど。それじゃ、またあとで。