最近テレビで連日報道されている韓国の観光船沈没のニュース。
命を預かるはずの乗組員が真っ先に逃げ、たくさんの尊い命が失われた事故。
船の事故は本当にコワイよ。
まわりを海に囲まれていて、どこにも逃げることが出来ないんだもん。
それは船の大小にかかわらずに恐ろしいコトだ。

ジツはオレも船の事件に巻き込まれたコトがある。

アレはね、オレがまだ20代の頃。
27~28才位だった。

あの時のことを以前やっていたブログに詳細記載があったから引っ張りだして来た。
その文章を元に書いてみる。




その事件とはねえ…





当時のオレらのたまり場であった「Bar ボヘミアン49」で晩飯を食べていたら、
マスターのカズちゃんが言ってきた。

「明日、横須賀の猿島にバーベキューに行くんですよ。
クルーザーを借りて、本牧から横須賀まで、かるーくクルージングしながら。
みのる君、明日ヒマ? 一緒に行こうよ。」

もちろんヒマだったオレは、

「行きます!行きます!何時集合ですか?」
「朝、8:00頃に集合で。本牧のさぁ、ブッチャーズ・テーブルのところに来てよ。」
「わかりました。じゃあ、明日。」

現在のYOKOHAMA BEY SIDEというクラブの裏に、
当時ブッチャーズテーブルというレストランがあった。
そこに集合することになった。

明朝早いので、その日はテキトーに切上げ、家に帰った。

次の日、途中で友人をひろい、集合場所に行った。
その日は、強い風もなく、とても良い天気だった。
気持ちよかった。

集合場所につくと、もう、みんな着いていた。
「オレ」「ボヘミアン49オーナーのタモツさん」その他友人多数…。
あれ?カズちゃんがいない。

しばらくして、カズちゃん登場。

「いや~昨日さぁ…店で飲みすぎちゃってさぁ…あったまいってぇ~」
「二日酔いじゃん。オレには明日早いからはやく“帰れ!”って言っといてさ。」
「いやぁ…参った、まいった。」

向こうでタモツさんが呼んでいる。

「お~い、荷物を運ぶの手伝ってくれ~」

オレと友人、二日酔いのカズちゃんは荷物を運んだ。

“ビール”山盛り。
“チュウハイ”山盛り。
ホタテやイカが入った“海鮮イロイロ”。

それから…

でっかい“押入れ収納ケース”みたいな“タッパ”に入った“おにぎり(ゆうに百個はあった)”。
そして、本日の主役“牛肉”これまたタクサン!

荷物を積み、全員揃ったところで出発した。

オレはカズちゃんと友人と“操縦席の上のデッキ”のベンチに腰掛けた。

「あぁ~ あ・た・ま 痛ぇ~」

カズちゃん、まだ言ってる(笑)。
ここ本牧は、ヨットやクルーザーがイッパイ停泊していて、なかなか航路に出れない。

「うわっ!あぶねっ!ぶつかる!」

大騒ぎの俺たちを横目に、スイスイとすり抜けている。

「この船長、うめ~な~操船。」

俺たちの乗った“船”は無事に出発した。
この時は無事だった。
一緒に乗っていた女の人が「うわぁ~ベイブリッジだぁ~」と言った。

みんなで見ると、目の前にヨコハマ・ベイブリッジが見える。
長いこと横浜に住んでいるが、ベイブリッジをこんな「目前から見る角度」で見たことは無い。
右の視界の端に“山下公園”、左の視界の端に“大黒ふ頭”。
目の前に、正面に、まるで虹のようにヨコハマ・ベイブリッジが広がっていた。

「ウワア~~~!!!」

この日の“バーベキューしに猿島までクルージング”に、誰もが胸を躍らせていた。

「もうすぐ、ベイブリッジの真下だ!」






そんな時、最初の異変が起きた。






このときに、気付いていれば、引き返していれば…あんな事にはならなかったのに…。







俺たちが乗っていたクルーザー「ネバーランド号」は、横須賀の猿島へ向け出発した。

ヨコハマベイブリッジにさしかかり、「もうすぐ橋の真下だ!」という時、
最初の異変が起こった。

順調に進んでいる最中、突然エンジンが停止した。
しかし、誰も気にはせず、海を眺めていた。

「まっ!ゆっくり行こうや!」

しばらくして、再びエンジンが始動した。

この時、カズチャンは「きもちわる…ウエッ…」
と、「二日酔い”と“船酔い」のツープラトン攻撃を受けていた。

朝からデッキでビールを飲む…ん~ウマイ。
今日は天気がイイ…ん~ウマイ。
ココは海の上…さらに、ん~ウマイ(笑)。

「ウ~ン!サイコー!!!」

空に向かって叫んだとき、、、
「ドルンッ!ド・ド・ド、、、プスッ、、、」
また止まった。
今度は、なかなか走り出さない。
まだ、“ヨコハマベイブリッジ”を過ぎたばかりである。

俺は、下の様子を見に行った。
船長が機械室を覗いている。

「ダイジョウブですか?」と訊ねると、
「んんん…何か、からまってるのかなぁ?」
と言いながら、今度はスクリューの方を覗きだした。

デッキに戻り、「まだらしいっすよ!」と報告。
船は少しづつ流され、どこかの桟橋近くに来た。
ベイブリッジを過ぎたあたりだから…まだ本牧近辺である。
時計はa.m 9:30頃を指していたと思う。

「朝飯も食ってないし、早く行こうよ! バーベキューくいてぇ!焼肉クイテェ!肉クイテェ!!!」

俺たちが、デッキの上で大騒ぎをしている頃、船長が服を脱ぎ、船尾から船底のスクリューめがけて、
「ドッボーン!」…飛び込んだ。

しばらくして船上に戻ってきた。

「んんん…んんん…」

それを横目に、俺たちは、、、

「肉っ!肉っ!肉っ!にっくっ!にっくっ!にっくっ!」

のんきに盛り上がっていた。

数分後、何とかエンジンがかかり出発した。
デッキでは、二日酔いの“カズチャン、腹が減ったオレ、船酔いしてる女子らが
それぞれ「早く、猿島に着かないかな~」…と、のんきに「ボー」っとしていた。




その時!!!




「ナンかこげくさくない?」
一人が言った。

確かに焦げ臭い。

下の操縦席を見に行くとナント!!!


機械室から黒い煙がっ!
機械室から出てきた船長が「ゴホッ!ゴホッ!」
顔じゅう真っ黒である。
まるでドリフのコントのようだった。

つづいて、機械室から助手の女性が出てきた。

「ゴホッ!ゴホッ!…せ、船長!ヤバイです…。」

やばい?

「やばいってどうゆうこと?」

この時点では、オレやデッキで大騒ぎしている仲間たちには、何のことだか、わからなかった。

「なんか、煙出てるよ!」

仲間が、そう話した瞬間…










「ドンッ!」











鈍い音と共に、船体の横に大きな穴が開き、
中から、すごい勢いの炎と大量の黒煙が吹き出てきた。






「キャ~~~~~~~~~~~~~~~ッ!」







船上は一瞬にして、パニックになった。








みんな、アタフタしている。
声にならない声を発し、どうしていいか判らなかった。

デッキから下に降りると、下の操縦室は煙に包まれ、時々、炎が見える。

「マズイ!」

そう思った俺は、みんなと船首に移動した。
救命ゴムボートを出し、海に放り投げた。
まずは、女性から。
一人、二人…ゴムボートに飛び乗った。

オレが連れて行った女の子が、足がすくんで飛び降りれない。
オレは、思い切って担ぎ上げ、ボートに放り投げた。



「早く離れろぉ!」

必死に叫んだ。

船内を振り返ると、今までいたデッキも操縦室も炎に包まれている。
まだ、相当の数の乗客は船の上だ。
見渡すと、周りに船が寄ってきた。


「なにこれ?なんかの撮影?」

バカヤロウ!撮影なワケネェだろ!



「お~い!危ないから、爆発するから、早く飛び込めぇ!」

大声で、こっちに向かって叫ぶ人も。

ほかの船も近くまでは来るのだが、爆発に巻き込まれないように、一定の距離までしか来ない。
何人かが、服を脱ぎ、飛び込み始めた。

「ドボン!」

「バッシャーン!」

ココでカズチャンが言った。「どうしよう…オレ、泳げないよ…」

そんな!わわわっ!
どうしよう…
ライフジャケットで近くにあるものは全部女性に着せてしまってるし…。

「ピキーン!」

ひらめいた。
船の周りに付いている浮力体を体に結び付ければいいんだ!
急いで船からはずし、カズチャンの体に巻きつけた。
こんなとき、ものすごく冷静なオレがいた。



(みんなより先に逃げたら、後で“鈴木はビビッて先に逃げた”とか言われるし…オレならなんとかなるだろう…ヨシ、最後に逃げよう…でもオレは泳げるけど…この靴…昨日買ったばかりだし…履いたまま飛び込むか?…でも、エンジニアブーツだから重いぞ!…無理か…やっぱ、あきらめて脱ぐか…)


そんな事を考えていた。

乗客14~15人のうち、ほとんどの人間が船から離れた。
あと、4~5人である。
(買ったばかりのこの靴…脱ぐか…)まだそんなコトを思っていた。

「さあ、飛び込むぞ!」と、かたっぽを脱いだとき、向こうから一際大きな船が近付いて来た。
爆発に巻き込まれるのを恐れてどの船も近づいてこなかったその時、
勇敢な一艘の貨物船が近づいてきた。



「今、頭のほうに回るから、飛び移れ!長くは側にいれないから、全員、一気に飛び移れ!」



オレ達船に最後まで残っていた数人はドカドカドカッ!と、飛び移った。
一気に離れる貨物船。

先に飛び込んだやつ、そして救命ボートで離れていた人たちも貨物船に引き上げてもらった。
少し離れたところで振り返ると、俺たちが乗っていたネバーランド号はモノすごい炎に包まれていた。

「今まで、オレたちアソコにいたのか?」

誰もが、信じられないといった顔をしていた。
ネバーランド号の周りで横浜海上保安庁と書かれた船が消火活動を始めた。
乗客、乗員、みんな怪我も無く、無事であった。

緊張がほぐれたのか、
「笑い出す人」
「泣き出す人」
「へたり込み震える人」


オレは「ハラヘッタなぁ」とつぶやいた。
そして、心の中で(それにしても、焼肉食いたかったナア…船ごと焼いちゃってるし…)
と思ったら、笑えて来た。
それをみんなに伝えると、誰もが笑顔になった。



アハハッ
(=⌒▽⌒=)(=⌒▽⌒=)(=⌒▽⌒=)(=⌒▽⌒=)(=⌒▽⌒=)




一旦、磯子のマリーナに連れていってもらった。
ラウンジのようなトコロで体を温めているとお弁当が出てきた。
誰かが気を使ってくれたのだろう。

結局、みんな何も食べていないので、いただくことにした。


ほか弁のふたを取ると…














焼肉弁当だった(笑)。

誰か一人が言った、、、。
「いいじゃん!結果的に焼肉食えたんだから!」



…笑えなかった。








オレはこんな、思い出を持っている。


うそみたいな話だけどホントの話だ。
もっと詳しく知りたい人は、横浜の関内にある
「Dinner Bar 4&9」
にこの時一緒にいたカズチャンがいるからそこで聞いて見てくれ。





韓国のニュースを見て、昔の記憶が甦って来た。
韓国では、いまだに責任のなすり付け合いとかやっているのをみる。
いたたまれない。
そういやあ、ネバーランドの船長もアノ後どっか行っちゃったなあ。
何の謝罪も無く…。




ここに当時の神奈川新聞の記事の切り抜きを張っておく。





本当に海の事故はコワイのである。
犠牲になられた方々のご冥福を祈ります。






















責任…後処理…長と名がつく者がするイチバンの仕事だと改めて思った、

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