日本産科婦人科学会主催で、拡大産婦人科医療提供体制検討委員会「新しい日本のお産をめざして」が開催され、委員長の海野信也北里大学医学部教授よりお招きを受け、参加してまいりました。私、鈴木寛は、医療問題、特に、小児救急・出産分娩体制の充実に取り組んできました。福島県立大野病院事件への対応、厚生労働大臣への陳情・署名集めなどもお手伝いもさせていただきました。
 本日も非常に有益な報告と討論が行われました。つい先ごろ、重症妊婦が80近い施設をたらい回しされたあげく亡くなられたことが大問題となりましたが、実は、これに類似した事態は日常茶飯に発生しています。医学的には、出産約250件に1件の割合で妊産婦が死に至る危険が発生します。わが国においては、世界最高水準の周産期医療体制を整備されており、ほっておくと亡くなってしまう重症妊産婦のうち98.6%(2004年)の方々の命を救われています。しかし、現在、産科医が分娩を行う一般病院からも立ち去り、分娩施設が急激に足らなくなった結果、全国で何十万人ともいわれている、お産難民が発生し、本来、重症母児のための施設である総合周産期母子医療センターに一般妊婦が流入しているため、センターが恒常的に完全満床状態で、重症妊婦を受け入れる余地がないという状況に陥っています。この問題を解決するためには、産科医に分娩現場にとどまってもらうこと、若手医師に産科に進んでもらうこと、医師と協働して正常分娩を管理する助産師を確保することによって、分娩対応能力を増していくことが不可欠です。
 本日は、二十代の産科医の約7割を占める女性産科医師の継続的就労の実態についての報告がありました。経験10年を超える女性産科医の半数が分娩の現場を離れ、転科、非常勤・パート化、退職しているとの衝撃の発表がありました。その背景には、当直、緊急呼び出しなどで休む間のない分娩現場の過酷な就労環境があります。今後とも、産科医の多くは女性が担っていくことを考えると、就労環境の改善なくして問題の解決はありえません。産科医の交代勤務制の導入なども話し合われましたが、すでに産科部門は、多くの医療機関で経営を圧迫しており、さらに、交代制導入や産科医の処遇改善を実現していくためには、そもそも、出産分娩または産科に対する収入・報酬を引き上げなければ難しいとの議論もなされました。解決策は、厚生労働省は産科診療報酬を引き上げ、分娩費の補助を引き上げ、卒後研修制度を改善し、労働関連法規の遵守状況を調査し、文部科学省は、医学部総定員を増やすとともに、産科への誘導策を検討し、都道府県は、産科医確保や分娩費アップのために必要な予算を投じ、これらのすべてのことを政治家が役所を指導し、病院経営者は産科医の配置増、給与・勤務条件の改善に努め、妊産婦およびその家族側もそれぞれの経済力に応じて応分の分娩費は負担し、一生懸命頑張ってくれた産科医には敬意と感謝を忘れずに、産科医も自ら勤務条件を改善していくための政策実現活動や職場改善活動を積極的に展開し、産科医のやりがいを後輩医師たちに熱く語りつづけ、メディアも公器として、よい広範に事実を集め、的確な解釈に基づき、報道や情報提供に努めるなど、あらゆる関係者が、この国を安心してお産ができる国にするために頑張っていかねばなりません。 私も、国会議員として、そして、医療人・医療政策者・医療ジャーナリストらのプラットフォームである「現場からの医療改革推進協議会」の事務総長として、この問題に懸命に取りくんでまいりたいと決意を新たにいたしました。