私も、約10年、公共政策を大学で教えていますが、我々の貴重な税金を医食住学環つまり医療・食料安全・住居確保・介護・年金・文教科学・環境に投ずるという政策は、経済財政・雇用政策の基本にも合致しています。
・輸出依存を脱し、内需とりわけ家計消費の拡大が日本経済の最大課題ではありますが、定額給付金制度は、政策学の観点からしても有効性が低いといわざるを得ません。つまり、貴重な税金の使い道として有効かどうかの判断基準は、如何に雇用増と消費増に直結しているかです。言い換えれば、消費されず貯蓄に回る部分を限りなくゼロにするための配慮が定額給付金制度は全くなされておりません。
・「ケインズ政策の基本も、消費性向の高い層に所得を移転すれば乗数効果が最大限に発揮され有効需要が創出され景気が刺激される」ということです。消費=所得-貯蓄ですから、ケインズ理論に従えば、貯蓄をしない人(低所得で貯蓄不能な人、無所得で貯蓄を取り崩している人)の所得を上げれば、所得増分はすべて消費に回ることとなり、波及効果は最大です。従って、税金の投入先は、消費性向の高い無収入の失業者・無業者や低所得者が有効です。現在、日本は四分の一の人が無貯金者、年収200万円以下の人々が1000万人となっていますが、こうした層の所得増を如何に図るかが鍵となります。所得増の大前提が雇用確保です。具体的には、安易なリストラの抑止による雇用確保、無業者・失業者・低所得者向けに介護などの社会的雇用を創出。低所得者層に手厚い賃金アップ、低所得者層の国民負担(税負担・医療保険料・年金掛け金)の軽減。この層で高校生・大学生を抱える家庭の家計総支出の56%が教育費であるので低所得者世帯向けに実需に応じた教育費助成。貯金を取り崩して生活している無所得・低所得高齢者の年金額増と医療費負担・保険料負担軽減などが消費増に直結します。
・特に、医療・介護・教育・保育などのソーシャル・ヒューマン・サービスは生活必需財で、需要の価格弾力性も所得弾力性も低く、一方、供給の価格弾力性についてはある程度弾力的です。医療崩壊でわかったように、高齢化などによって増えている潜在需要に対して、価格が低すぎて絶対的な供給不足になっているので、実需に応じて供給側へ補助をおこなえば、貯蓄には回らず、そっくりそのまま実需・消費に直結します。
・雇用増の観点からは、事業費に占める人件費比率も、公共事業が約15%(民間建築事業は約3割)であるのに対して、医療(介護含む)・教育(保育含む)では、5割を遥かに超えて6割、7割に達しますから、雇用創出効果においても最大となります。また、植林・間伐などの森林保全、農作業なども人件費比率が高く、同様の効果があります。
・なお、医療・教育などについてはアジア向けに新規需要を見込むことができます。
・以上の観点からも、医療、介護、教育、保育、環境に関し、無所得者・低所得者の所得増への税金投入は有効です。
・このように、とるべき政策は極めて明確であるにもかかわらず、なぜ、与党はそうした政策をとれないのでしょうか?それは、しがらみがあるからです。定額給付金については公明党。道路特定財源の一般化や天下り団体への大量な税金投入をやめることによって、ソーシャル・ヒューマン・サービスにより多くの税金を回すことができるにもかかわらず、それをやれないのは、道路族議員や霞ヶ関官僚とのしがらみがあるからです。
・自民党が政権の座がから下野して、予算編成から手を引かないと、こうした貴重な税金のより有効な使い方は実現できないのです。