行政書士の専門性 | 行列のできる行政書士 鈴川法務事務所 in 広島市

行政書士の専門性

行政書士は専門分野を持つべきかということについて、少し書いてみようと思います。



私は数年前に行政書士を開業するにあたって、何冊かのいわゆる「開業本」を読んでみました。
書店でよく見かける、「行政書士で~万円稼ぐ方法」とかいう類の本です。

そこにはほぼ例外なく、「専門分野を絞るべきだ」と書いてあります。


その根拠にも一理あります。

つまり、専門分野を絞ることによって、その分野に早く精通でき、顧客に対して最良のアドバイスをすることができますし、業務の処理スピードを上げることによって回転率が良くなり、収益性も向上するということです。

確かに言っていることは間違いないと思います。

しかし、自分で「これが専門分野だ」と言ってみたところで、必ずしもその仕事の依頼ばかりが来るとは限りませんし、逆にそれ以外の仕事が来たときに受けられないというのも、もったいないと思うのです。
それに、行政書士が「街の法律家」を標榜する以上は、法律に関することで相談を受けたら、何でも一通りのことはアドバイスできるようにしておかなければいけないと思います。

ですから、私はこれまで専門分野を打ち出したことはありませんし、どんな依頼が来ても断ったこともありません。
これが大都市なら事情は異なるかもしれませんが、特に私のように地方で開業する者にとっては、地域の方たちのニーズに合わせて仕事をしていくというスタイルもあながち間違いではないと思います。

ただ、これには結構苦労することがあります。
つまり、これまでいくら法律の勉強をしてきたといっても、それはあくまで机上の勉強であって、実務の知識ではないわけです。
したがって、相談を受けたときから勉強が始まるのです。

もちろん代表的な相談事例には対応できるように事前に実務書などで勉強はしておくのですが、実際の相談内容は当然のことながらケースバイケースであって、本で読んだことがそのまま当てはまることなどまずありません。
そうなると、先輩に相談したり、役所に確認したり、より詳しい書籍を探したりと、あらゆる手を使ってクライアントにベストな提案ができるように手を尽くすことになるのです。

このようにして数多くの事例にあたることによって、行政書士としての実力がついていくのだと私は考えています。

そして、ある程度年数が経ったとき、比較的処理してきた件数の多い分野については、専門家と名乗れるだけの経験と実力がついてくるのではないでしょうか。
「~専門事務所」と名乗るのは、それからでも遅くはないと考えています。