お月さまを探して | suzu-voice

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わたしの、すべて。




皆既月食の日。

お月さまはどこかしら?と

オフィス街で空を見上げる。

昨日このくらいの時間に
ここではなかったけれど

東の方の空に見えたから
あっちのはず。

反対の西の空には
さぞかしキレイだったであろう
夕焼けの名残が見える。

真上の空には雲一つない。
絶好のコンディション。

でも、
ビルに囲まれて
お月さまが見当たらない。

満月だから
明るいはずだけれど
街のネオンがジャマをする。

こっちへ行ってみよう。
東へ東へ移動する。

信号や曲がった道やビルが障害物になって
くねくねと進んで行くしかない。

人や車が多くて
上ばかり見ていると危ないから

はやる気持ちを抑えながら
四方に目線を走らせる。


多分ここから先に行くと
もっと見えなくなる。

そんなところまで来たけれど
やはりお月さまはいない。

ふと、後ろを見ると
ビルの2階にテラスがある。

あそこに登れないかな?
うん、行ってみよう!

階段を早足で登る。

そして2階から東の空を見ながら
南へ移動してゆく。

う~ん、やっぱり見えない?


こっち東だよね。

すると向かいのビルのすぐ横
木の葉と葉のすき間から
一瞬照明かと思うような光が見えた。

ん?

もう一度戻って目をこらす。

あ、お月さまいた!

どこどこ?

本当だ!
でも木がジャマで
ちょっとしか見えないね。

悔しい。

振り返るともう1階上にも
テラスがある。

あそこに登りたいね。

どこから行けるかな?

 

南の方からは通行止めの標識で

進めない。

 

北の方へ戻ると

節電のため止まっているエスカレーターがある。

 

ここから行ける!

 

気をつけながら一段一段登る。

 

動かないエスカレーターって

変な感じ。

 

でも、何だか冒険してるみたいで

うれしくなる。

 

こうして登った3階。

 

いました、お月さま。

 

もう食が始まっている!

 

きれいだね。

明るいね。

下の方がかけてる!

 

やっと出会えたお月様に

しばらく見とれる。

 

頬に当たる風が心地よい。

 

 

写真撮りたいね。

でも、お月さまうまくうつってくれないんだよね。

 

カシャカシャやるけど

スマホやタブレットでは

小さくぼんやりとしかうつらない。

 

こんなにキレイに見えているのに!

 

私はお月さまが大好きで

これまでも何度もトライしたけれど

小さい豆粒のようにしかうつらない。

 

更に欠けていることなんて

全くわからない。

 

前回のスーパームーンの時もそうだった。

 

月食ってなんで起こるんだったけ?

昔、理科の授業でやったよね。

 

普通の月ってどっちから欠ける?

右?左?

 

そんな他愛ない会話をしながら

見ていたら

 

あら、いつに間にか人が増えている。

 

皆見に来たんだね。

 

そうしているうちに

半分くらい欠けてきた。

 

すごいね。

 

もうそろそろ

欠けているのがわかるくらいには

うつるんじゃない?

 

カシャ。

 

やっぱり満月!

 

なんで~?

こんなに欠けてるのに。

 

欠けてる部分がうっすら見えるね。

 

私の写真は

少し欠けているのがわかるくらい。

 

設定を変えたら写るかな、と

モードを変えはじめたお友達。

 

夜景っていうのは?

さっきやったけど

やっぱりダメ。

 

色々なモードがあるんだね。

 

11つ試してゆく。

それでも結果は変わらない。

 

もう三日月くらいなのに

やっぱり満月!

 

ちょっと悔しそう。

そんな表情を見てとても大切に思う。

 

ビルの横に丸い光がぽつり。

 

そんなお月さまのスマホの画面を

見せてくれたのをパシャリ。

 

それを拡大してもまん丸。

 

お月さまってすごいってことだよね。

 

ちょっと向こうにも行ってみる?

 

大分お月さまも高く登ってきたので

移動しても見ることができる。

 

あ、ビルの窓にもうつって見える。

触れられそうなほど近い。

 

本当だ、また違ったいい感じ。

 

風が吹き抜けてゆく。

 

 

・・・ねえ、寒くない?

 

寒い!

 

もういいか。

うん、中に入ろう。

 

ビルの中は暖かい。

すっかり体が冷えてしまった。

 

私達1時間以上

お月さまを見ていたんだね。

 

あっという間のお月見タイム。

 

子どもに戻ったように

とても新鮮な気持ちで

 

大好きなひとと

大好きなものを

一緒に見られて本当によかった。

 

 

いつもありがとう。