昔、ソビエト社会主義共和国連邦(通称:ソ連)という国がありました。今ではその領土のほとんどをロシアが引き継いでいます。というか、もともとあった帝政ロシアが革命で滅びてソビエト社会主義共和国連邦という国になり、それも崩壊して今は「ソ連の後継者としてのロシア」が存在します。もちろん、ソビエト連邦が崩壊する時には大きな混乱が起こって、極寒の国なのに暖房用の燃料がなくなったり、都市部では食料品が手に入らなくなったのに農村部では食料品の山が朽ち果てるという流通不良を起こしました。
で、それを何とかするために国際的な救助活動や物資の援助が行われたのですが、意外にも他国からの救援を喜ぶどころか、怒る人が多かったそうです。
つまり、今は困窮しているものの、我が国は施しを受けるような「貧困国」ではない、ということらしいのです。もちろん、生きるか死ぬかの境界線にいる人たちは受け取っただろうし、感謝もしたでしょうけど。
それはある程度、納得の出来る話です。当時も「世界で一番裕福な国家」の代表であったアメリカ合衆国と肩を並べて冷戦という競争が出来たのはソ連だけだったし、冷戦のために資本主義国家が周辺国を次々に「反共政策国家」として引き入れていったように、ソ連も東欧をはじめとする多くの衛星国家を持った、押しも押されもせぬ大国だったのですから。
しかし、何かの歯車が狂えばいとも簡単に貧困はやってくる。
しかも、その中にいる人には分からない形でいつの間にか、そばにいる。
そんなことが日本にも当てはまるのは、当然と言えば当然のことです。
それが、今日の1枠で宣伝されている岩波新書『反貧困』の大きな前提なのだと思います。
今の新聞を見れば、ワーキング・プアだの格差社会だの、いろんな「生活に厳しい話題」が並んでいますが、それを一口に言えばやはり「貧困」なのです。考えてもみて下さい。今の親やお爺ちゃんの時代、日本は確実に「貧困国」でした。敗戦するまでもなく、やはり欧米諸国とは越えられない壁がある「アジアの貧しい国」の一つだったのです。
今の日本人の感覚では「貧しい人=駅などにいるホームレスなど一部の人」という意識が強いのではないでしょうか。でも、私もやっぱり今の日本は「一部に大金持ちのいる、全体的に見たら貧困国」の入り口に立っていると思っています。
ま、まずそう言うことはなさそうですが、私が国政選挙に出馬するとしたら
「日本から餓死者を出さない」
をスローガンにしていたと思います。
今の日本の方向性は
「従業員の賃金は東南アジアとの競争力に勝つために、東南アジアの労働者並みに」
「富裕層と大企業の法人税は優遇して、上からの内需拡大と、海外からの優秀な頭脳の買取に集中させる」
という二本柱でやっていこうとしています。
自民党はことあるごとに「日本を普通の国に」と言っていますが、今の状況だと違う意味で「日本は一般的なアジアの貧困国に」なってしまうしかないですよ。
自民党はまだ、傾斜経済と高度成長の成功体験が忘れられずに、そこを足がかりに「富国強兵」と「脱亜入欧」を夢見ています。
そんなわけで「日本から餓死者を出さない」は、あながち冗談でもなく、また意外と実現の難しい大きなスローガンなんです。
ま、それをどうするか、とか、今の状況がどうなのか、というのは、私がこの本の筆者ではないので知るよしもありませんが、今の「一般的な日本人」と「貧困」というのは思った以上に近い存在だぞ、という意味でこの本を取り上げてみました。
反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書 新赤版 1124)/湯浅 誠

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