Suzes' Room BLOG.

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Suzes' Room
All Day Dining Cafe & Restaurant
3-20-1 Tamagawa Setagaya-ku, Tokyo 158-0094, Japan
open. 12:00-26:00(L.O.25:00)
closed. Wednesday tel.03-6805-6038

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私のもとに初めて舞い込んだ”出演オファー”。それは、私を取材してくれたローカルテレビ局で放送しているテレビショッピングの準レギュラーだった。「でも、お高いんでしょう?」とか「えー!これで一万円切るんですか!」とか言う、あの役だ。正直女優業ではないので気乗りはしなかったが、少しでも知名度が上がれば、と思い引き受ける事にした。 ・ とにかく強い印象を残そうと、私は毎回必死にリアクションを工夫した。初出演の際は、とにかく「嘘だー!安すぎるー!ぎゃー!」と自分の出せる限りの大声で叫んだのだが、大声選手権じゃないんだから、とスタッフから真顔で注意されてしまった。 次の出演時は”人間本当に驚くと絶句してしまう”という設定で挑んだ。 「お値段、一万円を切りまして…なんと!9,999円での販売です!」 私は目を見開き、口元を手で抑えたまま絶句モードに入った。 「いかがですか?安いでしょうー?」 「・・・。」 結局番組が終了するまで私はフリーズ状態のまま沈黙を貫いた。今度は、危うく放送事故になるところだったと怒られた。 ・ その後も”あまりの安さに感動して泣き出してしまう”、”驚きのあまり失神してしまう”など様々なリアクションを試した。が、「そんな価格ではメーカー側に利益が出ないので、社員の生活が心配になります!」と司会者に対して本気で怒り出した回の収録後、私の降板が決定した。 ・ 最後の出演は自分らしく「跳び上がるほど驚く」というリアクションをとる事にした。 商品価格が発表されると、私は「えー!」と言いながら画面から見切れるほどの高さまでジャンプした。 画面から私が消えている間に、隣のローカルタレントが価格にイチャモンを付けて、更なる値下げが行われた。 「嘘でしょーー!」今度はバク宙二回転。 最後に、今だけセットで付いてくるという豪華な付属品が発表されると、遂に私はスタジオ中を跳び回った。「信じられなーい!」「破格ー!」 次々に感動を叫びながら難技を披露する私をバックに、司会者が「また来週お会いしましょう」と挨拶をする。なかなかシュールな絵面だったと思う。例えるならそれは、紅白歌合戦でたまに見かける演歌歌手が歌っている後ろで、何故かアクロバット集団がパフォーマンスしている図に似ていた。 ・ 努力は必ず報われる。その放送を、日本に滞在していたハリウッドの映画プロデューサーがたまたま見ていたなんて。「ワンダフォー!」と言ってその場で拍手してくれていただなんて。あるいはこれは奇跡かもしれない。それならそれで、私は更なる奇跡を起こす為に日本を”跳び”立つだけだ。

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