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玄界灘から吹き付ける冷たい風が、那珂川の川面を揺らし、博多の街に冬の深まりを告げる季節。九州の冬は、厳しい寒さの中にもどこか人の温もりが混じり合う、独特の情緒があります。特に、一年の節目である「節分」を控えたこの時期の福岡は、街全体が少しずつ活気づき、春を待つ静かな熱気に包まれます。


博多っ子から「お櫛田さん」の愛称で親しまれる櫛田神社。その門前に立つと、冬の澄んだ空気の中に、ひときわ目を引く「巨大な顔」が姿を現します。


 124年ぶりの特別な「節目」に


今年の冬は、例年とは少し違う、特別な空気が流れています。天文学的な話をすれば、正確な一年の長さは365日と約6時間 。そのわずかなズレが積み重なり、今年は124年ぶりに節分の日が2月2日になるという、歴史的な巡り合わせの年なのです 。


そんな節分を前に、櫛田神社には恒例の「あの巨大なもの」が設置されました。


それは、高さ5.3メートル、横幅5メートルにも及ぶ、圧倒的な存在感を放つ巨大なお多福面です 。このお多福面が設置される風景は、福岡の冬の風物詩として60年前から続いており、節分の時期に合わせて参拝客を温かく迎えてくれます 。


 笑顔の口をくぐり、福を授かる


お多福面の最大の特徴は、その大きく開いた「口」にあります。この大きく開いた口は通り抜けができるようになっており、その中をくぐることで「福を授かる」と言い伝えられています。


幼い女の子が、自分の背丈の何倍もある巨大な顔に驚き、少し恐る恐る近寄っていく姿は、微笑ましくも冬の神社の日常を感じさせます。参拝客たちは、それぞれの想いを胸に、色鮮やかなお多福の口をくぐり抜けていきます。


ある人は、仕事への情熱を。取材に訪れていた若手の芸人さんは、お多福の口をくぐりながら「テレビに出て、もっと仕事が増えますように」と、切実かつ前向きな願いを込めていました。またある家族は、愛する人の健康を。「コロナ禍という大変な中だけれど、家族が一年健康で過ごせることが一番」と語るその表情には、厳しい冬を共に乗り越えようとする強さが宿っていました。


 変わる形、変わらない願い


残念ながら、今年は感染症の影響により、伝統的な「豆まき神事」の中止が決まりました。しかし、神事の形は変わっても、人々に福を届けたいという神社の想いは変わりません。豆まきの代わりに、来月の3日には参拝客に豆が配られる予定となっています 。


賑やかな豆まきの声は響かなくとも、お多福の穏やかな微笑みは、静かに私たちを見守ってくれています。この巨大なお多福面は、来月(2月)の11日まで設置されており、冬の終わりから春の始まりにかけて、多くの人々に寄り添い続けます 。


結びに


九州の冬は、お多福の笑顔とともに一歩ずつ春へと近づいていきます。124年ぶりの特別な節分を前に、巨大な口をくぐって授かる「福」。それは、単なる幸運というよりも、厳しい冬の中でも笑みを絶やさず、前を向いて歩んでいくための「心の活力」のようなものかもしれません。


皆さんも、博多の街を訪れた際は、ぜひ「お櫛田さん」に立ち寄ってみてください。そこには、5.3メートルの大きくて温かい「福」が、口を広げて待っています。


 

 

 

 

 


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