同類呼ばわりされてから数日が過ぎていた。店に来る客はほとんどが常連。他愛のない話に相槌を打ちいつもと変わりない日々が続いている。
何も変わっていないはず、それなのに何かが違う。
いつも一人で来る客、会社の経営者らしいが今日は珍しく女性を連れてきている。
「ヒロ君、紹介するよ。新入社員の田宮君。」
新入社員にしては熟女である。
俺が軽く女性に会釈をすると
「いい男ね。彼女は?」
俺の苦手なタイプ。
「いえ、今のところはおりません。」
横に座る社長が失礼だよと注意した言葉を無視するように
「そうなの、私も今は一人よ」
妖艶な眼差しを送ってくるが、俺には何のざわめきも感じない。
「失礼致しました。まだご注文をお聞きしておりませんでした。何になさいますか?」
敢て俺は女性にではなく、社長に伺った。
女性の瞳がほんの少し険を帯びるが、俺には常連の社長のほうが優先である。俺が女性というものが煩わしいだけだからかもしれないが。
そんな俺をよく知っている社長は、申し訳なさそうに
「私はいつもので、彼女には甘めのものを頼むよ」
俺達の会話を面白くなさそうに彼女は真っ赤な唇にタバコをくわえ俺に視線を向けた。
カクテルを出す前に火を彼女に差し出すと、彼女の手は俺の手の上に重ねられ引き寄せられた。さすがにこれには俺も躊躇し腕を引き戻すところだった。
「やめないか!」
見かねた社長が女性の肩に腕をかけると
「お父さん!」
肩に置かれた手を払いのけ
「最近の男共は情けないわね」
俺と社長を一瞥した後、店を出て行った。
取り残された社長からは深いため息が漏れていた。
「すまないね。どうも一人っ子で甘やかし過ぎたみたいだよ」
社長の前にグラスを置くと、両手で包むように手元に引き寄せ、うつむき加減に呟きをもらす。

