澄夫と知り合ったのは、大学のゼミで席が隣りになったという偶然からだった・・。

 

 

高校そして大学のサッカー部の女子マネジャーのみどりは、

 

まさにサッカー大好き女子の典型だった・・。

 

 

2010年の5月、みどりは澄夫に誘われて、初めて東京競馬場に行った・・。

 

初めて見る東京競馬場は、とても広く大きく、美しい緑の芝の上を、

 

キラキラと輝く馬体のサラブレッドたちが走る姿に、みどりは魅了されていた・・

 

 

「競馬なんて、おじさんたちがやるギャンブル」だと思っていたみどりにとって、

 

競馬場そしてサラブレッドの美しさは、とても新鮮だった・・。

 

 

馬券の買い方もわからないみどりに、澄夫は「今日の青葉賞に、ペルーサという馬が出るんだ」と

 

語った・・。

 

「ペルーサ??」と首をかしげるみどりに

 

澄夫は「ペル―サは、アルゼンチンのサッカー界のスーパースターのマラドーナの愛称だよ」

 

と教えてくれた・・。

 

 

 

青葉賞で、ペルーサが快勝して以来、澄夫とみどりは毎週末に競馬場で会うようになっていた・・。

 

 

澄夫が買う馬券は、「サイン読み」と呼ばれる独特の予想法で、

 

みどりは、最初は全く「サイン読み」の意味も楽しさも価値も理解できなかった・・。

 

 

しかし、みどりは、澄夫に教えてもらいながら、「サイン読み」の世界に没頭していき、

 

みどり自身で研究した作戦により、高配当も的中できるようになっていた・・

 

 

大学卒業後、大手商社に就職した澄夫から、

 

 2018年の秋、「12月から中東の発展途上国に駐在して仕事をする事になった」と

 

突然告げられた・・。

 

 

みどりは、澄夫と会えなくなる寂しさで、心が破れそうだった・・

 

 

みどり「中東でも、メールやLINEは通じるのかしら?」

 

澄夫「メールやLINEは送らないで欲しい・・」

 

みどり「どうして?」

 

 

澄夫は「会いたくなるから・・」と、ぽつりとつぶやいた・・。

 

 

澄夫「駐在期間は5年の予定だから、5年後のクリスマスイブの有馬記念の日に会おう♪」

 

みどり「うん♪わかった・・。約束だよ」

 

澄夫「うん♪約束♪」

 

澄夫は、5年後のクリスマスイブの有馬記念の日にみどりにプロポーズする事を決めていた・・。

 

 

中東の発展途上国の駐在員となって2年目、澄夫は現地の作業員のミスをかばい、

 

自分のミスとして上司に報告して、日本に帰国させられ、その後 商社を退社。

 

その後、職を転々として、今、北海道の小さな小さなサラブレッドの生産牧場で働いている・・。

馬業界MAP】生産牧場編 | Pacalla(パカラ)

 

産まれたばかりの子馬たちの世話をせずに、有馬記念が行われる中山競馬場には行けない・・。

 

でも、5年前 みどりと「約束」したのだから・・。

 

 

みどりは、兵庫県の有名な温泉地の大きな旅館の若女将として忙しい日々を送っていた・・。

 

竹取亭円山 – 有馬温泉

 

温泉ブームで外国人宿泊者も多く1年で最も多忙な師走の旅館の若女将として、

 

有馬記念が行われる中山競馬場には行けない・・。

 

でも、5年前 澄夫と「約束」したのだから・・。

 

 

5年前の約束・・「2023年12月24日(日)クリスマスイヴ

          中山競馬場のパドックの近くのハイセイコー像の前に

          15時に待ち合わせ・・」