さらば愛しき日々よ
泣いたやつがいた 悔しかったのだ
吠えたやつがいた 怒っていたのだ
微笑んでいたやつがいた ゆとりがあったのだ
笑ったやつがいた うれしかったのだ
叫んだやつがいた 答えを見つけたのだ
黙っていたやつがいた 悩んでいたのだ
はしゃいでいたやつがいた 楽しかったのだ
颯のように去ったやつがいた 頭に来たのだ
戻ってきたやつがいた 悟ったのだ
爽やかなやつがいた 心豊かだったのだ
机に残る疵は 彼女の名残り
壁の落書きは 彼の人柄
十人十色
三十余年ものうず高い塵芥の中に
あのときの顔と姿が立ち上がる
あのときの叫び声が湧き上がる
だが今 全てに別れを告げる
だが今 学び舎は閉ざされる
晴れやかな春だというのに
光舞い立つ春だというのに
旅立ちの春だというのに
お別れだ
三十余年の親しみを込めて
三十余年の懐かしさを込めて
三十余年の愛しさを込めて
さらばだ
会うは別れのはじめ
だが別れには次の出会いの予感がある
部屋の片隅で鼻を鳴らす子犬のような別れではなく
じめじめ湿っぽい長梅雨のような粘つく別れではなく
晴れやかに別れようではないか
あのミュージカルのように
声をそろえ歌いながら
指を鳴らしタップを踏みながら
涙の笑顔で
春爛漫の大空へ叫ぼう
さらば
また逢う日まで
と