「楽園の烏」八咫烏シリーズ新刊。* | 机の上のちいさな箱

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素朴な日々の暮らし。

こんにちは*


雲の隙間から光が差し込んで
陽の光って いいな と
思う 日曜日の午後です。



最近は 読書が進むので
溢れそうな気持ちや書きたいことが
たくさんあります。


きょうは 大好きなシリーズの
最新刊について。


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「楽園の烏」安部智里 文藝春秋


八咫烏シリーズ 第二部の一冊目。
シリーズ8冊目です。



以下、ネタバレ・考察なので
シリーズの新刊を楽しみにされている方、
どうか ご注意ください。




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シリーズ6冊目「弥栄の烏」から20年後。

玉依姫・弥栄の烏は
人間の世界でいうと1995のことだから
2015年という計算かと思います。

安原はじめ という荒山の所有権を持つ
人間が「幽霊」と名乗る女性に
山内に送り込まれたところから始まります。


博陸候となった雪哉…雪斎
政策について 描かれていました。
(博陸=関白)

わたしたちは 楽園に暮らしている、
猿さえいなければ、完璧
と自ら言う 八咫烏たち。

民は まだ 猿の襲撃に怯えています。



共通の敵を設定し、
(それが現実にあっても虚構であっても)
敵がいることにより民は纏まる… 
そのやり方は歴史上何度も行われてきたこと。
(例えば、恵美押勝の新羅征討計画など)

共通の"憎むべき敵"が与えられると 民は安心する。
現状の不満から目を逸らさせることができる。

雪斎 の行っている政策は
そう言う類いのものだと思います。

あの大戦の時、猿は全て抹消したのだから 
20年経った今 いるはずがない。
そして、雪哉ならそんなこと許すはずない。



皆が ある一つのことに
集中して 目を向けていること、
そうすると 何かまた別のことが
人々の頭と心から
必ず 抜け落ちてゆく。

楽園の烏に描かれていることは
今 現実社会にも言えることで、
背筋が ぞわりとする
妙な不安感があります…



*

"山内村を復活させ、神事を行っている" 。
そのことについて 雪斎が
根本的な問題の解決 と言っていることからも
山神への信仰、神事が
山内を存続させる為の
最重要と考えていることが伺えます。

山内は山神様の荘園として生まれ、
八咫烏は神人として人形(じんけい)
与えられているから。

地下街から連れて行かれた赤ん坊たちは
「人間」として外界で育てられている と
雪斎が言っていました。
すごいなあ と思いました。
なるほど 神事をする人間がいれば
山神様は山神様として在れます。

 山神さまへの信仰・神事こそが
山内を存続させることだから、
八咫烏としての自覚がないまま育てられた「人」に神事をやらせれば 
山内の崩壊を食い止めることができるかもしれない。

玉依姫で「人ならざる者」は、
一に自覚、二に他者からの認識
と描かれていました。
自覚がなければ それは八咫烏ではなく、
 人間なのでしょう。

*

安原はじめ は
登場当初の愚鈍な印象とは違い、
洞察力に優れた人物であると思いました。

ふらふらして意思がないような
仮面を被っているけど、
しっかり自身のことをわかっていて
見るべきもの そして判断すべきものが
わかっている。

自分の意思や感覚、思考、感情を
しっかり捉えている人物だと感じました。

*

(ことわり)』という言葉が
何度も出てきました。

人間の『理』とは、全く違う『理』でここは成立しているのです。

外界と、山内では『理』が違うせいか…

『理』が違う。

山内の特殊な『理』が、独自の基準で…

『理』―山の意思は、…


シリーズの中で『理』の言葉が出てきたのは
「玉依姫」のラストが最初。
玉依姫でも ダブル鉤括弧の『理』
だったので、おそらく 同じ意味合いを
もつのだと思います。

『理』は第二部のキーワードなのかも…


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《 勝手な想像と考察 》

「幽霊」を名乗る女性は 紫苑の宮?

こぼれ落ちそうな瞳は、あまりの黒さに瑠璃色に輝いて見える(弥栄の烏より)
満天の星のきらめく、瑠璃色に澄んだ夜空のような瞳(楽園の烏より)

目の美しさの描写が 弥栄の烏のラストの
紫苑の宮の目に重なるところがあったから
身体の描写が年齢的にも20歳くらいと思われるから

谷間(たにあい)、地下街 の
区画整理と言われる抗争が 
第二部のポイント?

雪斎が区画整理を行ったのは8年前
安原作助が行方不明になったのが7年前
外界に出ることができる第三の門が
全てに関係していると思われる
先代の金烏(奈月彦)が亡くなるきっかけは
谷間、地下街の民との抗争が一因ではないか……
真の金烏は八咫烏を守る作用があるため
手を下すことが出来ない
多くの民が亡くなったことで
雪斎と対立して苦悩して
病んでしまったのではないか

この20年の間に、長束と奈月彦に
(今上陛下)が生まれている、
その母はあせび?

今上陛下の兄が長束だと描かれているから
先々代の金烏(長束・奈月彦の父)
新たに側室を迎え 子どもが産まれたのでは
新しい側室は 1巻目でのみ登場し 
その後の様子が描かれていない
あせび ではないか…?
何故なら、先々代の金烏はあせびと
あせびの母である浮雲に
だいぶ執着していた様子だったから。
それに あせび なら ちゃっかり側室になりそう。


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わたしは「楽園の烏」を読んで、
ようやく「弥栄の烏」のあの文章の意味を
理解しました。(遅い。)

――若宮(奈月彦)は博陸候景樹の意図を悟った。
彼は雪哉のために焚書を行ったのだ。


100年前に 神域で亡くなった真の金烏 那律彦
後に博陸候となった景樹は
こうなることがわかっていた…
時代と共に山神様の力が弱まり、
山内が瓦解してゆく未来が見えていた。

でも為政者としては
民にそんなことを知られてはいけない。
真実を隠し
騙すようなことをしてまででも、
山内に暮らす八咫烏の心の安定を
守ろうとした
そして 自分たちの後の為政者は
守ろうとするだろうとわかっていたから。
だから、焚書を行った。

民を盲目にして
楽園にいると錯覚させてまでも 
雪斎が 守ろうとしたのは… 民草、八咫烏… 



また トビの言葉を聞いて
弱き者たちの 想いを知り、
雪斎の言葉を聞いて
為政者の 想いを知り、
交わることは 難しいと
しみじみと考えさせられました。

「楽園の烏」は現代の今 起きていることと
重なる部分があると思います。
深いです。


*

安原はじめの今後、頼斗の今後、
幽霊の正体、千早のこと、迦亮のこと、
奈月彦、浜木綿、紫苑の宮、
明留、真赭の薄 ……
谷間、地下街との抗争、
安原作助のこと…
この20年の間に何があったのか
とても とても、知りたい。

続きが 楽しみです。*


*

楽園の烏、烏百花を購入したので
「かれのおとない」読むことができました。

いつか また外伝集として
収録されるのを 楽しみにしています^^


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読んでくださり
ありがとうございました*



新しい一週間が
穏やかな時間になりますように。*



如奈。