【時を賭ける】5.5pips 「続・ごめんねキャッチボール」 | ストラトキャスターのオタりごと

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ひとりごと?ふたりごと?いいえ、こちらは僕がアニメ・ゲーム・漫画・フィギュアなどなどをポロポロと語るブログです!

「DENSHOやってる?交換しようよ。」翼はスマートフォンを取り出すと二次元バーコードを端末に表示させ、

ほれほれと画面を左右に揺らしながら結菜に向けた。
「DENSHO?やってるよ!読み込むね。」結菜は丁寧語交じりから砕けた喋り方に代わっていた。

翼と結菜は同じ1回生で年齢も同じであることを互いに知ったからある。
どうやら、結菜は関東の出身らしい。結菜の兄が関西の大学に進学し、

翼の生まれ育った本宮市に住んでいて結菜も本宮市に住むことを決めたというのだ。
あっけらかんと話す結菜を見ていると、兄妹の仲は良好に思える。

そこそこに仲がいい兄弟であっても、一人暮らしをしているのであれば近くに住むことは稀であろう。
どちらかが一人であることを好むのであって、近くに兄妹が住んでいたとなればお互いに独り立ちをしたという気にはならないはずなのだ。
翼というと親元を離れたことといえば小学校の林間学校くらいなものであり、

それも集団生活であるからして、完全な独り暮らしをしたことがなかった。
通学に時間を割いているとはいえ、通学定期券もあり独り暮らしの家賃光熱費を思えば

まだまだ実家暮らしのモラトリアムを享受し続けても問題はないのである。
掃除炊事洗濯はからっきしで、親にまかせっきりで日々の生活を満喫してきていたのであった。
一方で結菜と言えば、一通りの家事はこなせるようである。兄の世話もしているのであろう。

ピロリ、と結菜のスマートフォンは翼と友達登録ができたことを知らせた。
結菜のスマートフォンの画面には黄色いひよこのゲームキャラクターとアカウント名"つばさF"が表示されていた。
結菜が個人トークルームを開き「よろしくね。」と『つばさF』にメッセージを送ると
ふふと笑い、よ・ろ・し・くとつぶやきながら翼は返した。
「また何かあったらよろしくね。もしかしたら時々お店に遊びに行くかもしれませんし、その時はよろしくお願いします。」
「じゃあじゃあ、クーポン券横流ししておきます!今は持ってないけど、また今度。

あ、別に怒られないやつだから気にしないでね、これは駅前でいつも配ってるやつだから。
……ああそうだ、漫画はよく読むの?」
「漫画はあまり読まないんだけれども、昨日はわたしの知らないことに触れてね。漫画で知識を取り入れたくて。」
昨晩、結菜が読んでいた漫画を考えると知らないこととは麻雀だったのだろうが、

何が起きたら宗教勧誘された日に麻雀に興味を持つようになるのだろうか。
選んでいた漫画について詳しく聞かれるのは恥ずかしいかな、と翼は考えてそこについてはあまり触れようとしなかった。
「それにね、フローズンやソフトクリームが食べ放題って書いてあって……。つい。」

食べ物につられたようで、少し照れた様子の結菜だったが、翼は自分の所属している店が褒められた気がして悪くなかった。
「でしょう?最近は少なくないけど、うちはドリンクとフード充実してるんだ!その分スタッフは大変だけどね!」
Cafestaでは深夜時間帯などスタッフが少なく忙しい場合には出前や菓子類の販売にとどめているがフード系も扱っている。

店長の山Pは、うちの店はインターネットができて漫画も読めるがあくまでも喫茶店なんだ、
ドリンク・フードはレトルトや冷凍であっても欠かしてはいけないよといつも言っている。オーナーの受け売りだろうけれども。
「そうなんだ。お仕事ってやっぱり大変だよね。私の高校アルバイト禁止でさ、仕事をしたことがないの。
学費は両親が出してくれるのと、仕送りがもらえるのだけど、生活費はアルバイトって約束しているの。

早く働かないと来月の支払いがすぐきちゃう!」
実をいうと翼の高校もアルバイト禁止の校則が存在していた。翼は気にしていなかったし、

両親からも『社会経験は必要だね、社会経験は積んでおくと良いよ。』と言われていたし、あの真面目な優子に至っては 
『校則?そんなもの守る必要ないわ。生徒の自由を守らない不当な校則よ。ばれたって所詮は使いもしない内申点に響くくらいだわ。

私は推薦なんていらないもの。』と吐いて捨てたくらいであった。
「もうアルバイト先の目星はついてるの?」翼は自分の経験をもとにアドバイスをしようと、

軽い気持ちで聞いたが意外な言葉が返ってきた。
「ええ、雀荘『clover』っていうところ。麻雀が打てるお店ね。」