【時を賭ける】3pip「ダイスロール」 | ストラトキャスターのオタりごと

ストラトキャスターのオタりごと

ひとりごと?ふたりごと?いいえ、こちらは僕がアニメ・ゲーム・漫画・フィギュアなどなどをポロポロと語るブログです!

 
翼の時給は900円だ。この店では店員のスキルにあわせてランクがつけられており、
翼はランク1である。従業員の胸には名札が付いていて
 
いつも笑顔でご対応! ☆☆☆ 池田
清潔な空間を御提供! ☆☆ 野々村
明るく元気にご対応! ☆        有馬
 
とキャッチフレーズとランクと店員名が書いてある。
☆印のランクは5段階あって、給料のベースが決まっていてその他勤続年数や
評価によって給料が変動する。ランクによってベースは50円変動するのだ。
もっとも、☆4に至っては社員になれるレベルのスキルが要求され
☆5に関しては店長と同じような権限をもっている。
なお、店長をはじめ、社員の名札にはランクの記載はない。
つまりは経営本部としては三ツ星が最高ランクとして客に見せたいのだろう。
大人の世界はズル賢く出来ている。
 
「ずる賢い大人が帰って来た。」ごみ出しに行ってから10分と帰ってこなかった
池田に対して翼がポツリと呟いた。
「マイクはいってんぞ、有馬。」 
「へっ!?」聞かれてたか。
店員は円滑な指示と応答を行うため、トランシーバーを身につけている。
翼はあわててシャツに引っかけてある送信ボタンの状態を確かめるように
胸にてを当てた。
「嘘。マイク入ってなかったぞ。」
何て人だ。はぁ、と呆れるようにしながら腕をおろした。
「ずる賢いってなんのことだ?」
店内は緩やかなBGMが流れている他は基本的に静かなため
トランシーバーのマイクが入ってなかろうと
翼の声は池田に届いていたのであろう。
「えっと……池田さん、隠れてタバコ吸ってるじゃないですか、勤務時間中に。」
「あー、うん?」
「それなのにランク3じゃないですか。ずる賢いなって。」
「有馬ってさ、休憩時間の存在知ってる?俺、昼から通しなわけよ。」
労働基準法。6時間以上働く場合休憩が義務付けられている。
「でね、昼番の間に45分とってるんだよ。あとは遅番でタバコに割り振ってるわけ。
これはやまぴーから許可済みで、お客様の見えないところで吸いなって言われてんだよ。」
おどろいた。バレてるんじゃなくて許可してたのか。
「やっぱりずる賢いじゃないですか。」
「誉め言葉としてうけとっておくぞ。」
 
二人は客が見えてもいいように私語をやめ、カウンターでの仕事を始めていた。
深夜フリータイムの受付開始時刻から一時間、チェックインのピークは過ぎている。
優子はブース清掃にまわっていた。
翼は届いた新刊を並べる準備をしていた。
単行本のカバーをめくり、盗難防止のICタグをつけ、数ヵ所に店舗印を押し、
クリアカバーを装着する。勢いよく本を滑らせるとクリアカバーが裂けてしまうので少し注意力のいる作業なのだ。
2,3本と作業を進めているとカウンターの前を同じ大学の例の女の子
宝塚結菜が沢山の漫画を抱えて通過した。
 
 
「帝都大を出たけれど」
「熱牌」
「地-chi-hou-」
「がけっぷち」
「サキヅモ無き雀卓」
 
 
翼が父の本棚で見たことがある麻雀漫画だった。
「麻雀、好きなのかな。」
今日はつくづく麻雀に縁がある日だな。と翼は思った。