アート8:針山真実さん

針山3姉妹と言えばバレエ愛好家では有名なバレリーナ姉妹ですが、その末っ子でニューヨークとロサンジェルスでバレエを教える真実さんに、ニューヨークで仕事をすることそしてバレエについてお話を伺いました。

踊り手側から、教える側から、好きだという情熱の側から、そして厳しい現実の側からとあらゆる角度でバレエの魅力を知り尽くしているからこそ、多くの方々を魅了する真実さんのレッスンや講演の秘密に迫ります!

失意と覚悟の果てのニューヨーク

ミッドタウンのスタジオ、本当に広くて地下鉄にも近く素敵ですね。真実さんが東京からニューヨークに居を移したのは、やはりバレエの為ですか?
ニューヨークに移った時20歳だったのですが、もうその時バレエは止めていたのです。

あの有名な針山3姉妹の末っ子が、バレエを止めていた!
18歳ぐらいで体型が変わりますよね。私はその時に寝ても痛い程腰を痛めていてダンスが出来なかったのです。そんな時姉は既に海外で活躍していて、自分は一体何なのだろう、あんな風にはなれない、と思って19歳でバレエを断念したのです。

順風満帆なバレエ人生を歩んで来られたと思っていました。
18、19の頃はそんなコンプレックスに加えて中学生の頃からアトピーの治療で服用していたステロイドの副作用が酷かったこともあり引きこもり状態でした。姉やバレエ仲間にはバレエがあって活躍しているのに、私はバレエを止めて引きこもりという葛藤があって、それで「死にたい」と思った事もあったのです。

今の輝くような真実さんからは想像出来ないような失意のどん底にあったのですね。
でもそれには勇気がいるんです。だからその勇気があるんだったら人生やり直す事に使ってみようと思ったのです。そして昔姉と一緒に二週間過ごしてABTやあらゆることに感動したニューヨークで生活しようと決めました。私を知る人が誰もいない所で生きて行く事に勇気を使おうと。

覚悟の果てにたどり着いたニューヨークでの生活はどんなでしたか?
まずは英語学校に行って、何をしたらいいかの模索でした。でも仕事をしないと生活が続かないので、まずはアルバイト探しを始めたのです。

やっぱりダンサーとか?
両親は音楽家で、私も小さい頃から母にピアノを習っていました。即興と聴音が得意で、覚えている曲なら引けるのでバレエピアニストなら行けるんじゃないかと。でもどのバレエスタジオでも「何所から来たの?学生?ビザは?」と3つ質問されて終わりでした。学生ビザしか持っていなかった私は働けなかったのです。

ダンサーとしてだけではなく18歳の時には音楽家であるご両親と一緒に「夢コンサート2001」を主催されたり、日本でピアニストとしても活躍してらっしゃいましたよね。
アーティストビザだったら取れるのじゃないかと思ったのです。最終的には渡米から一年半後に、職業バレエピアニストで音楽関係の出版社がスポンサーになってくれました。そして2年程ピアニストとして働いた時に、またバレエをやろうかなあと思ったのです。

再発見したバレエと生きる道

失意のうちに止めてしまったバレエですよね。どんな心境の変化があったのでしょうか?
ずっと座って一日中ピアノを弾きながら踊っている人達を見ているうちに「本当にこれでいいの?」って思えて来たのです。まだ若いのだから今踊らないと、という思いでレッスンを再開したのです。

やっぱりバレエが好き、という事なのでしょうね。
バレエを仕事にするなら教える事がしたいと思って2005年にスタジオを一週間に一回1時間半レンタルして始めました。日本語のフリーペーパーに宣伝したりして、最初は7人からスタートしたのです。

ここからビジネスウーマンの真実さんがスタートするのですね。
大人のクラスから始めたのですが、一年後には子供のクラスもやって欲しい、という声があって、それで子供のクラスも始めてどんどん広がっていきました。

スタジオをレンタルして始められたビジネスですが、ご自分のスタジオを持とうと思われたきっかけは?
クラスも増えて自分のスタジを持つのと、部分部分でスタジを借りて運営するのが金額的にほとんど同じになってきて、「もう少しがんばればなんとかなる」、というところまできていたのです。それにホームスタジオが無いといつまでたっても「お借りしてます」、という感じがして。

針山真実スタジオをオープンしたのはいつですか?
2010年の6月に決心して、それから2ヶ月後の8月には契約していました。

思い立ったらすぐ行動ですね!ニューヨークに行くと決められた時も、ビザ習得の時も、アルバイトを探された時も、本当に凄い行動力と決断力です。これはビジネスには必須の条件かと思います。
迷ったのですけれど、すぐ決めました。

ホームスタジオを得られた今は毎日何クラスぐらいあるのですか?
一日最低3クラスはやっています。

ちょっと変わった所でおとなの美容バレエもあると伺ったのですが。
ストレッチとコアの筋肉トレーニングとヨガを取り入れたBallet Beautyというクラスです。このクラスは体に良い事をしましょうというクラスで、体の中心がしっかりしていると自然と姿勢もよくなってくるのですよ。

私もBallet Beautyのレッスンに通いたいです!ところで、お教室の生徒さん達は発表会もしていますね。
舞台で年一回、スタジオで年一回です。普段の練習は小さいうちはちょっとつまらないと思う子もいるのですが、発表会の練習は皆な本当に好きですよね。発表会は皆なの目標になりますしね。昨年の発表会はリバーサイドシアターという古い協会の中の舞台で行いました。今年は2年連続完売だったので、初の2回公演に踏み切りました。

レッスンは日本語ですか?
日本語と英語の両方で進めます。

ロサンジェルスでも教えてらっしゃると伺ったのですが。
2年半前から一ヶ月に一回週末に行って教えています。

ロサンジェルスでのレッスンはどのようにして始まったのですか?
ニューヨークの知り合いがロスに移られて、お子さんをバレエのレッスンに通わせようと思ったら、小さい子にきちんと12345のポジションを教えるクラスがなかったそうなのです。それでぜひロスで教えて欲しいと言って頂いて、そこから始まりました。

バレエの講演会もしてらっしゃいますよね。
講演会はニューヨークの日本クラブでバレエの楽しみ方を話しています。例えば歴史とか、バレエの演目のストーリー、振り付けの意味やどうしてチュチュを着る様になったのか、など。

あの短いチュチュを着る様になった理由って何ですか?
昔のバレエって足先だけだったのです。だからスカートも長くて大丈夫だったのですが、大技が入り始めてからスカートじゃみえない、ということで、クラッシックチュチュが出来たのです。

スタジオを持って大人と子供のクラス、講演会、日本やロスでも教えて全てやったという感じですが、これからやってみたい事はありますか?
いろんなことに興味がありますが、今は自分がやっている事を精一杯やりたいです。

19歳で挫折してニューヨークで一からやり直し、今は好きな事でダンサーのみならずビジネスウーマンとしての人生を歩んでおられる真実さん。人生に前向きで生きる事に真剣なその強さに元気を頂きました。これからも応援しています!

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