ちょっと珍しいアリス、ということで芥川龍之介氏・菊池寛氏の共訳によるアリス。
タイトルは「アリス物語」1927年(昭和2年) です。
国会図書館デジタルコレクションのリンクです。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1717293
国会図書館デジタルコレクションより
実際には、芥川龍之介氏は、1927年の7月に他界されており、菊池寛氏による前書にあるとおり…
引用(漢字仮名遣いは現代の物に適当に変えてます)
この「アリス物語」と「ピーターパン」とは、芥川龍之介氏の担任のもので、生前多少手をつけていてくれたものを、僕が引き受けて、完成したものです。
故人の記念のため、これと「ピーターパン」とは共訳ということしておきました。
ということで、実際には、大半が菊池寛氏による訳と言われています。
菊池寛氏も、芥川龍之介氏も、自身による小説も多く出してますが、海外文学、童話、お伽噺などの翻訳も多数出版してますので、この「アリス」も、翻訳に取り組むべき魅力を感じていたのではなかろうかと思います。
翻訳については、文体は古いものの、現在翻訳されているアリスとあまり違和感なく読めると思います。
そして、なんといっても、その文章がとても流暢で美しく、翻訳の研究だけではない、文豪ならではの味が感じられます。
まだ完訳物がまだ殆ど出版されていない時代に、翻訳の仕方で、これだけ美しさを出した両氏のセンスを感じます。
また平沢文吉氏による挿絵も、和洋折衷ともいえる、とてもかわいらしいものになっています。
(しかし、何故か、挿絵と本文の整合性がとれていない所があったりします。)
国会図書館デジタルコレクションより
留意点として、何故かは解りませんが、9章と10章で大部分が省略されている個所(おそらくは翻訳の過程で)があるので、初めてアリスを読む方にはあまりお勧めではないかもしれません。
~ここから、一気に時代は現代へ~
ちなみに、この芥川・菊池版の「アリス物語」は、新装版と言って良いのかどうか解りませんが、現在、パール文庫より、「アリス物語」 として出版されています。
こちらは、今でも普通に売ってます。
アリス物語 パール文庫 2014年6月10日 初版
漢字仮名遣いを現代のものに変えて読みやすくはなってますが、文章自体は変わっていません。
また、挿絵イラストを、喜一氏というイラストレーターの方が書かれており、なんていうか最近の日本のアニメちっくな可愛らしいイラストになっています。
今時の子供も大人も、こういったイラストは親しみやすそうですね。
(私もこういう絵柄は好きな方です)
前述のとおり、芥川・菊池版は大幅に省略されている個所もあったりするし、翻訳自体が古いものなので、文書は古風だけどイラストは近代的というなんだかアンバランスな印象と、解説を読んでも芥川・菊池翻訳について掘り下げているわけでもなく、原本同様、初めてアリスを読む人向きではないとも思うし、どういう層を対象にしているのかがよくわからなかったりします。
巻末に、古い作品を現代の高校生に読んでもらうために、次の方針に~という表記があるので、現代の高校生向きなんでしょうか(^^;敢えて古い訳のものを持ってくるシリーズなのかな、でも、アリス自体が古い作品なので、アリスそのものを楽しむのなら、翻訳は現代のものの方が親しみ易いような気がしたりと私の悪い癖ですがこういうことを色々考えてしまいました(^^;
そういうことを気にしなければ(汗)国会図書館デジタルコレクション(原本)のものよりも、読みやすくなっているので、純粋に、誰もが知る文豪による翻訳のアリスを楽しんでみたい方には良い本だと思います。
アリスの近代の日本語訳版も今後いろいろと紹介したいと思います。
つづきます。




