『世界秩序…グローバル化の夢と挫折』
中公新書 田所 昌幸 著 2025年9月25日発行 のお話です。
それで、本の"帯"と云うか、"腰巻"と云うか、この本の宣伝文が、このように書かれています。
表紙側には、
『覇権の誕生と終焉・・・崩れゆくアメリカ主導のグローバリゼーション 大転換する世界はどこへ向かうか?』
背表紙側には、
『古代ローマ帝国からアメリカ一極優位まで』
裏表紙側には、
『第二次大戦以降、アメリカが主導してきたグローバル化が挫折しつつある。自由民主主義と市場経済の社会モデルが綻びを見せ、権威主義の中国やロシアが秩序変更を狙う。世界はこれからどうなるのか・・・。本書は古代ローマ帝国から現代のアメリカ一極優位までを俯瞰し、「一つの世界」への統合と、分解のダイナミクスを捉える。さらにグローバル化後の「四つの世界秩序」の可能性と、日本の未来を考察する』
すごいです! 大きくでました田所さん。この内容で920円+税ですから、お安い買い物です。
"古代ローマ帝国から現代のアメリカ一極優位までを俯瞰し、アメリカが主導のグローバル化の挫折から、日本の未来の考察"まで。これは、かなり、認知機能の低下防止対策に役立つのでは、と、思った次第。
それで、評論本の読書スタイルですが、先ずは〈 はじめに 〉を読み、〈目次〉に目を通し、本文を飛ばして〈おわりに〉を読み、本文は斜めすっ飛ばし読み。これが最近のスタイル。
それで、話は少しだけ変わりますが、此のところ、寝る前とか、夜中や早朝に目が覚めた時などに、睡眠導入剤的に軽い本(内容的・重量的)を読むのですが、いまは、偶然、あの"久米宏" の『こんにちは、久米宏です』(発行1989年12月15日)を、埃まみれの本棚から取り出し、ページを捲っているのです。
それが、先日(1/13)、彼が元日に亡くなっていた事を知りビックリしたのです。肺ガンで81歳でした。で、彼も、私と同じような、"斜めすっ飛ばし読み"をしていた話が書かれていました。
まぁ、それがどうした? と、問われても・・・。まぁ、彼がこの本を書いたのは45歳の頃、"ニュースステーション" でバリバリで、寝る間も惜しむ時です。私の方はと云えば 、気力、体力、思考力、集中力、持続力の低下が原因での斜めすっ飛ばし読み。
話が逸れました。『 世 界 秩 序 』のお話に戻ります。それで、〈はじめに〉の冒頭で、
『黄金の拘束衣・・・アメリカの有名なジャーナリスト、トーマス・フリードマンが、グローバル化が進む世界でよい生活がしたいのなら、アメリカ流の政治経済モデル、つまり「黄金の拘束衣」をまとう以外に道はないと言ったのは1999年の事である』
と、記しています。"黄金の拘束衣"ですが、トーマス・フリードマンが『レクサスとオリーブの木』(1999年発行)と云う著書で記述し、その筋では、それなりに有名言葉のようです。
それにしても、"黄金の拘束衣" と云う言葉、何か、聖書とかギリシャ神話とかに出てくる、とても、とても深い、意味ありげな言葉のように見えるのです。でも、違う様です。
『金融資本家は全ての国に、金融引き締め、小さな政府、低い税率、流動的な労働市場、規制緩和、民営化、そして全世界に開かれた経済で縫い合わされた"グローバリゼーションの服"を着るように迫り、それを着れば経済は成長し、政府は縮小する』
といったことから"黄金の拘束衣"という意味から出来たようです。知りませんでした、勉強になりました。
でも、拘は「強くとらえる」「こだわる」「束縛する」といった意味を持ちます。拘束されるのは政府と労働者で、それによって利益を得るのは、儲かるのは、資本家とか、株主とか、投資家とか、投機家とか称される金を出す連中で、政府と労働者は損をし疲弊するのです。
それで、
『フリードマンの高らかな勝利宣言の賞味期限がきれるのにそう時間がかからなかった。2001年9月、アメリカの繁栄と軍事的優越の象徴とも言うべき、世界貿易センターと、国防総省への同時多発テロ』
ここから、アメリカ一極優位が崩れ始めた、と記ています。
そして、『「歴史の大きな力」は、過去を説明する時には見えやすいものだが、歴史の渦中にいる人にはこの先何が「大きな力」になるのかは往々にして解らないということを、ギリシャ悲劇は教えている』
この先の事は、未来は、だれにも解らない? でも、しかし、本の宣伝文句には "日本の未来の考察" が謳ってあるけど、考察とは「考えて、調べて、明らかにする」ことですが、冒頭から宣伝文句は否定されるのです。
まあ、未来への"ひとつの考察"と解釈するべきで、こんなところでイチャモンつけてはいけないのです。これって、認知症の初期症状?
はい。次は〈おわりに〉を読みます。
『いつのまにか歳をとってしまった・・・電車で席を譲られる年齢になってしまった』
えっ、私には経験ありませんが、私より6歳若くて、席を譲られたのですか・・・、これは、かなり、ショックだったでしょう。因みに、著者 田所 昌幸 氏 の経歴を記します。
1956年 大阪府生まれ
1981年 京大法学部大学院卒
1983年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス修了 法学博士
1997年 防衛大学校教授
2002年 慶応大学法学部教授
2022年 国際大学特任教授
『私が生まれたのは1956年だから、高度経済成長期に子供時代を過ごした世代・・・白装束の傷痍軍人が駅前の地下道でアコーディオンを弾いていた姿をかすかに覚えている・・・1964年東京オリンピックはテレビで見た・・・1970年の大阪万博には何回もいった・・・大学生になって海外旅行も行った・・・学生運動は過去のものになっていた・・・イデオロギー対立で悩むこともなかった・・・最初に給料をもらうようになった27歳の時からずっと失業もせず大学で生きてこられた・・・これまで平凡かつ平穏に過ごしてこられたのは、総じて安定し繁栄した時代を生きた幸運によるものだ・・・そんな私は「アメリカ帝国」が主導した世界秩序の下で生きてきたと言える』
私とは異なり、恵まれた家庭で何不自由なく育ち、学問一筋の大学教授で順風満帆の人生を送られていた方です。そして、
『だが私がともに生きたアメリカ帝国はもはやない。ならそれと連動して、日本もこれまで通りには行かないと覚悟すべきだろう。歴史を振り返れば戦後日本のように基本的な体制や制度が80年も続くことはむしろまれで、私の学生や子供たちの生きる世界はずいぶん違ったものになりそうだ。それではそれはどんな世界なのか、そんな思いで本書を執筆した』
そんな思いで、私は本書を買いました。そして、
『次の時代を切り拓くのは、これまでの制度や常識の枠内で賢く立ち回る人たちではなく、そういった枠を食い破って挑戦する人々なのだろう』
ごもっとも、 "あたり前田のクラッカー" ですが、枠を、政治を、経済を、社会制度を、食い破って、ぶっ壊すのも容易ではない、 いや、古い制度は自壊する?
もしや、もしや、高市早苗が、これから4年間ですべてを破壊するかも?
アメリカの中間選挙が11月で、共和党の敗北は決定事項のようですし、トランプ大統領本人も敗北を覚悟しているようですし、2年後の大統領選は、いろいろ混乱が予想されています。最悪、内戦の危機も囁かれているようです。
EU諸国も英国も、格差で、貧困で、移民で、分断で、大転換、大混乱の様相です。
そして、そして、お隣の中国も、これまた、習近平政権が経済の停滞で不安定化しているようです。
たぶん、これからの4年間で、世界的に、第二次大戦に匹敵する、大転換、大混乱が起こると、その筋では、いろいろ云われているようです。
はい、『世界秩序』に戻ります。本分の最終章で著者は、
『・・・戦後の日本では、「日本」を守るために市民がどんな代償をどのように分担するのかを正面から語ることなく、政治については国家が提供するサービスの分配が主要な争点だった・・・ケネディ大統領が、1961年の就任演説で、「あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい」と高らかに訴えることを、もし日本の首相が国会の就任演説で言おうものなら、反発でなければ嘲笑を招くかもしれない』
いや、高市自民の圧勝を見た後では、喝采と称賛を受けるような、そんな気がする今日この頃。
それで、『反発でなければ嘲笑』とした理由として、
『言うまでもなく、戦前の軍国主義の下で、忠君愛国の美名のもとに国民が総動員され、多数の犠牲を出した挙句に徹底的な敗北を喫した苦い経験の為である』
そして、
『・・・民主主義を言うなら、国家の一員であることで受ける利益と共に、国家を支えるための負担や危険についても責任があると考えるのは自然だろう。・・・例えば兵役と云う形で、国民に危険の分担を求めているのは、軍国主義国に限られているわけではない。・・・ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの先進的な民主主義国家として評価の高い北欧諸国では、女性すら兵役の義務を負うようになっている』
だが、しかし、しかし、です。著者は〈はじめに〉で、
『日本は自由民主主義とは名ばかりの「異質な」国で、自民党の一党優位と官僚支配の国』
と述べているのです。だからヤバイのです。著者が云うように日本は『ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの先進的な民主主義国家』ではないのです。
国民は、『戦前の軍国主義の下で、忠君愛国の美名のもとに国民が総動員され多数の犠牲を出した挙句に徹底的な敗北を喫した苦い経験』を繰り返すことを危惧しているのです。
現に、自民党の改憲右派は、戦後憲法を否定し、人権とか、主権在民とか、自由とか、民主主義とかを制限し、戦前の天皇主権の憲法体制復活を目指しています。
著者は本書で、矛盾した論理展開をしています。田所さんとしては、兎に角、危険だらけの国際環境下、徴兵制で、軍備拡大で、核武装で、危険な国からの攻撃に備えたいのでしょう。
そして、もう一点、軍備拡張の大きな要因として、
『危険だらけの国際環境の中で、危険の分担という政治的共同体にとって基本的問題をあいまいにしながら戦後の日本が生き延びてこられたのは、安全保障上の核心をアメリカに依存してきたところが大きい。しかし、すでに論じてきたとように、そのアメリカ同盟の信頼性が今後も維持できるかどうかは疑問だ』
と、述べています。それで、私としては、「アメリカ同盟の信頼性が今後も維持できるかどうかは疑問だ』とありますが、これは、もう確定だと考えます。
アメリカは「南北アメリカ」だけを勢力圏として、その他の地域には、興味もないし、守る義理もないし、どうぞ皆さんだけで、おやりなさい! と、これはトランプが初めて言い出したのではなく、オバマの頃からの流なのです。
本日は、とても、とても、長くなりました。
はい、結論、米国抜きでの防衛政策、そして、軍国主義と無縁の、民主的な防衛組織の構築は可能か、この二点が、とても、とても、大きな課題です。二点とも、とても、とても、とても、可能性は低いと。
まあ、このまま行くと、徴兵制で、核武装で、旧帝国憲法の復活で、いつか来た道の可能性が高いと思います。高市政権の総選挙圧勝が、その第一歩なのでは・・・と、思ったりしている、今日この頃です。
それでは、また。