本日も『 I f の 総 て 』で、
第13章「歴史は頑固親父か?」
第14章「2041年から来た野次馬」となります。
第13章後半、穂花が山本五十六への説得を失敗したことで、花村は、真珠湾攻撃の「前日のホノルル」へトリップし、米国側に日本の真珠湾奇襲作戦を伝え、日本の真珠湾奇襲作戦を失敗に終わらせる作戦に出ます。
それで、そこで語られる内容ですが、これまでと同じく、歴史的事項について、それなりの研究結果に基づいています。そこの点はフィクションではありません。巻末には参考文献の一覧40数点が記載されています。
大きな背景として、
・そもそも日米間には戦争によってしか解決できない問題などなかった。
・日米交渉の決裂が日米開戦に直結していたというわけでもない。
・中国問題は日米対立の争点ではあったが、アメリカの利益を著しく損なうわけ でもなかった。
・日本の南進政策の方が問題だったが、アメリカの関心は東南アジアよりも大西 洋に向けられており、日米対立は二の次のはずだった。
そして、軍事的には、
・真珠湾は難航不落の要塞であるとアメリカ人は自負していた。戦略上これ以上 の立地はなく、また最高の防備力を誇り、補給体制も万全だから、日本からの 攻撃は不可能と断じていた。その過信が米軍の油断を招き、連合艦隊による奇 襲の成功率を高めた
と、語られ。
そして、真珠湾奇襲攻撃と云えば、話題となる、アメリカが日本の奇襲攻撃を「事前に知っていた説」に繋がりそうな点として、
先ずは、
・陸軍航空隊幹部の作戦研究では、「日本海軍は6隻の空母からなる艦隊を組織 し北方ルートで接近し、早朝に真珠湾攻撃を仕掛けてくる」との結果が出てい た。しかし、太平洋艦隊司令長官にも報告が上げられたが、なぜか、航空哨戒 が強化されることはなかった。
そして、FBIに拘束された花村が、捜査官に奇襲攻撃を伝えるシーン。
捜) 航空攻撃の可能性があることは、すでに陸海軍の幕僚に伝わっている。
花) 攻撃の可能性を把握しているのなら、なぜ迎撃態勢を取らないんだ?
捜) それはおまえが心配することではない。
花) 事前通告を故意に無視するつもりだな。政治的意図を感じる。あえて無防備に 奇襲を迎えようとしているだろう。
そして、地の文で、
「これは単なる慢心ではない、確信犯的な慢心、意図的な警告無視である。その目的 はただ一つ、アメリカの世論を一気に世界大戦参戦に誘導する為に違いない」
と記していのです。
でも、この展開は、とても、とても、変です、不自然です。花村は歴史研究家でトリップする事前に、あらゆるデータを調べ上げて居るのです。この「アメリカ知っていた説」は、現代人の歴史好き、と、まではいかない、それなりの人でも、それなりに知っている、それなりに有名な説です。
花村がこの事をまったく知らないのは、とても、とても、変です、不自然です。攻撃側も止められず、攻撃されるアメリカ側は、知っていながら迎撃する意思なし。
どうする花村薫です!
はい、ここから、第14章「2041年から来た野次馬」になります。
花村を留置所から助け出す男、これからの展開に関わる、中国人歴史学者のトニー・チャンの登場です。実はこの男、2041年から、100年前の1941年12月7日ハワイに、特に目的もなく、単なる歴史観光でトリップして来たのです。
二人りのやり取り、
花) もしかして、君は私の協力者なのか?
男) いいえ、私は傍観するだけです。
花) 歴史の書き換えを手伝ってくれるんじゃないのか?
男) 歴史を書き換えるなんて考えたこともありません。歴史には一切干渉しない主義 です。そう誓約しなければ、ヒストリー・シュミレーターのユーザーにはなれま せん。
花) それはおかしい、シュミレーターの開発目的は「もしもあの時こうしていたら、 歴史はどう変わったか」を確かめることだったんだ。歴史に干渉して何が悪い。 戦争に負けなかった日本、アメリカに占領されなかった日本を夢見て何が悪い。
男) 夢を見るのは自由ですが、あなたは一度でも歴史の書き換えに成功した事があり ますか? このアプリのユーザーズ・ガイドには「歴史を書き換えるのはほぼ不可 能である」と書いてあったと思うのですが。
それで、私も読んでいて、時々混乱するのです。「歴史に干渉」とか、「書き換え」とかの言葉が出てくるのですが、彼らが、トリップしているのは、あくまでも、あくまでも、仮想現実の世界であって、現実の世界ではありません。
仮想現実の世界での、干渉・書き換え実験であり、そこから導き出される答えを検証し、そこから、現実を、未来を、変える為の策を見出す。そう云う事なのでした。
それで、今回は、これでお終いなのですが、一応、わたし、もう、最終章まで読み終えています。
これから最終章までの展開は、かなり、かなり、ハチャメチャな展開となり、小説として、書き始めてみたものの、テーマが大きすぎて、終わらせ方にかなり悩んで書き上げたようにも、思えます。
因みに、この作品の初出は、雑誌「新潮」の2024年6月号、7月号、9月号、そして1年あいだが空いて、最後が2025年9月号となっています。
1年間の空白は悩んだ空白? それとも、他の仕事が忙しくての空白? まあ、この業界の事情も、著者の事情も分かりませんが・・・一年間の空白には、それなりの事情があったような? なかったような?
因みに、島田雅彦の小説は、これまで、1冊も読んだことはありません。この作品を知ったのは、島田雅彦と政治学者の白井聡がホストのYouTubeチャンネル、「エアーレボリューション」での照会でした。
このところ、いろいろなYouTubeチャンネルで紹介される本を、Amazonでポチットしてしまい、手元には4・5冊積読状態です。
話が逸れました。
本日の、インプット・アウトプットは、これにてお終い。
それでは、また。



