



定休日でシャッターの閉まった銀行の前でビールケースに腰かけて
ひたすらビーズで何かを作っていた。
『おばちゃん!仕事している所を写真に撮らせてよ!』
こう言いながらにこにこしながら近づいて行くのだが
この時点で写真を撮り終えてブルーな気持ちになってしまうとは知る由も無い。
『いいよ』
の言葉に甘えてパシャパシャと撮っていくのだが
『どう?売れてる?』
と俺の質問を皮切りに怒涛のように喋りだした。
『人通りも少ないし、若者が減ったね』
どうやらこのおばちゃんの店も最近オープンした
郊外型大型ショッピングセンターの影響を少なからずとも影響を受けているようだ。
『ネットオークションとかどうなの?』
『それも考えたけど、手元にパソコンが無いからね~』
ビーズ細工のひとつの値段は大体100円くらい。
パソコンを買うどころかその日の生活もままならないらしい…
委託販売も考えたそうだが、おばちゃんが6割、店が4割のマージンに
たかだか100円くらいの商品ではやっていけないと言う。
しかも、最近は『ビーズ細工』がブームなので
材料はどこでも売っているし欲しい人はみんな自分で作っているらしい。
小さいビーズに糸を通し、目を細めながらこう語った。
うぅ…なんてヘビーな人生なんだ…
カラフルなビーズ細工の裏にそんなエピソードがあったとは…
何か買ってやりたかったがおっさんには似ても似つかないものばかり。
『今にイイ事あるって!頑張ってよ!』
と声をかけてあげるくらいしか俺には出来なかった。
『ありがとね。頑張るよ』
その時、今まで険しかったおばちゃんの表情が初めてやわらいだ。
たかが一坪足らずの場所にいろんな人生が見え隠れする一坪の風景であった。