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 昨日写真を撮りに行った『天神山』で思い出したのだが

3年ほど前こんな事があった。



 時期は、桜の花もちょうど見ごろの3月半ば

いつものように夜の9時ごろ原付で仕事場から帰っていた。

もうすぐ家に到着寸前というところで道の真ん中に一台のタクシーが停まっている。

信号が青になっても進む気配が無い。

後ろにいた車はそのタクシーを追い越して行く。


「邪魔な停め方するなー」

と俺もタクシーを抜かそうとするのだが何か様子が変。


 タクシーの屋根に付いているランプが赤色に点滅している。


その頃、タクシーの売上金を目当てに強盗する事件が多発していたので

『赤く点滅するランプ』がどういう意味か知っていた。

タクシーの運転手が強盗などで身の危険を感じた時に

周りに知らせるシグナルだ。


 原付をタクシーの傍へ付けて中を伺うと後ろの客が暴れているではないか!

しかも、その手には紙幣を握り締めていた。



 そこで、すぐに俺の中で「タクシー強盗」の文字が浮かび上がった。

頭の中では、『ススBGM』で『太陽にほえろ!』のテーマが鳴り出している。


 窓をコンコンと叩き

『あ~ちょっといいかな?私は○○署の刑事だが何かあったのかな?』

ここで一般市民という事がバレると俺の身も危ないと思い咄嗟に嘘をつく。

そこで運転手さんの『助かった~』という顔が今でも忘れられない。

 「俺は金を持っているんだぁ~でもこいつがぁ~!!」

年の頃は50代後半であろうか、酒に酔っ払っている元気なおじさんだった。

運転手さんはと言うと20代半ばといった感じであろうか。

顔のあっちこっちから血を流している。

 暴れている男性をなだめつつ運転手さんに


「刑事はウソです。すぐに警察呼びますね」

と伝えるのだが


『え~違うのぉ~』

という絶望感に満ち溢れた顔も忘れられない。

 近くのすし屋さんに駆け込み

「警察を呼んで下さい!」と伝える。

それを聞いたご主人やお客さんも外に出てきた。

「じゃあ、外で話を聞こうか?」(気分はチョウさん)

と男性を外に出そうとするが暴れて、今度は俺にまでかかってきた。

散々ど突かれるのだが、不覚にも途中でキレてしまった。

 もみくちゃになっている所へ先程のすし屋で飲んでいた女性が乱入してきた。

どうやら俺を犯人と思っているらしいポカポカ叩かれる。

そのうち仲間のタクシーも集まってきた。

「あ~あんた、○○(会社名)の人でしょ!なんて事してくれんの!!」

仕事でいつもそこのタクシーを使っていたので見慣れた顔も何人かいた。

ヤバイ!みんな俺の事を犯人と間違えている!!

「違う俺じゃない!!」

と叫ぶのだが、さっきの酔っ払いの女性が

「何言ってんの!あなたじゃないの!!」

と酔っ払いながらも平然と言うではないか。

 そのうち、パトカーが5台ほど到着した。

本物の刑事さんが出てきて「当事者は誰?」の問いにその場にいた3分の1の人間が俺を指差す。

当の男性も

「警察が暴力振るっていいのか~!」

とわめき散らしていた。

ちっ!余計な事を…

「おたくも第一発見者なので署まで来てもらえますか?」

パトカーの後を原付で付いて行くのだが頭の中は明日の新聞の見出し。

『刑事を名乗る男がタクシーの乗客と大暴れ!!』

ババ~~~ン!!


ドキドキしながら警察署に着くと、さっきの男性がまだ暴れていた。

刑事課長さんらしき人物が出てきて

「事件を見てみぬふりをするこの時代、ご協力感謝します。」

と言われ気分が乗ったところで取調室に連れて行かれる。

そこで2時間ほど現場の状況を説明するのだが調子に乗って

「やっぱりカツ丼とか出るんですか?」

と恐る恐る聞いてみた。すると…

「え?お腹すいたんですか?」

と刑事さんに笑われた。


 無事、取り調べも済み帰りがてらさっきのすし屋のご主人に挨拶に行くと

「大変だったね。これは私からのご褒美。」

と言って特上にぎりを握ってくれた。

「あ~さっきのあなた!ごめんなさいね~」

うゎ!俺の事を犯人に仕立てようとした女性、

更にベロンベロンになって俺の所にやってきた。

俺が警察に呼ばれている時、ずっと飲んでいたのかと思うと腹が立つ。


 さっきのタクシーの件だが

『天神山』で花見をしていた男性が2次会の会場(ここのすし屋)に

タクシーで乗り付けたらしいのだが、どうやら料金を多く請求されたと

勘違いし大騒ぎになったのだと言う。

 その後、タクシーの運転手さんは男性から殴られた目を失明してしまい

運転手さんを辞めたと言う事だった。

男性は『傷害罪』で起訴されたんと警察にお灸をすえられたらしい。

 次の日、仕事場で

「金一封ものだね!お祝いにどこで飲む?すすむのオゴリで…」

とみんなで騒いでいたのだがまた警察に呼ばれる。

結局、俺には何もなかったのだが、そこで出された苦い缶コーヒーの味は二度と忘れない…





 そんな事もあったよなーと『天神山』の枝ばかりの桜の木の下で甘ったるい缶コーヒーを飲む『なんちゃってチョウさん』の俺だった…