
幼少の頃から人と違った事をするのが大好きで
小学校3年生になったあたりから周りから変人扱いされていた俺だが
そんな俺にも甘い思い出の一つや二つ叩けばバンバン出てくる。
忘れもしない中学3年の今の時期
高校受験を控えクラスの空気がだんだんと重くなりつつある中で
俺は相変わらずマイペースで毎日を楽しく突っ走っていた。
ある日の昼休み、クラスの地味な女子から呼び出しを受けた。
放課後渡り廊下で待っているから来て欲しい。
との事だったが、当時稚魚だった俺は
たぶん苦情でも言われるのだろうと違う方向でドキドキしていた。
その女の子は学年でも成績はトップクラスで学級委員も何期も務めていた。
家は由緒ある学校の先生。親戚にはお医者さんもいる名家の家系。
八百屋の息子の俺とは人種が全然違っていた。
勉強が出来る上に笑った顔がちょっとかわいい。
普通なら近寄りがたい存在だがその笑顔を見たさに
当時からツマラン冗談を言っては笑わせていた。
今回はやり過ぎたか…
生きた心地もしないまま一日を終え指定の場所へと向かった。
渡り廊下の隅っこに彼女はいた。
セーラー服も合服に変わり心地よい風にさらさらの髪の毛もなびいてる。
だが、にわかに表情がキビしい。
自習中にうるさかった事か…果ては女子トイレで大きいほうをした事か…
思い当たる節はたくさんあった。
こりゃ間違いなく文句を言われるな…
近づきながらそう確信した。
「な、何?」
恐る恐る尋ねてみると
「これ家で私が作ったの、よかったら食べて容器はいらないから。」
ピンクのハンカチに包まれた小さい箱を渡される。
バッキュ~~~~ン!!
意外な展開に放心状態となり、一瞬自分の体から魂が抜けていくのがわかった。
もしかして、もしかして…これって愛の告白ぅ????
同級生に見られるのが恥ずかしかったので礼もそこそこにその場を立ち去った。
なんだろう、なんだろう、箱の中身は一体なんだろう…
口元だけヒクヒクさせながら足取りも軽やかに家に帰った。
かばんも置かずに箱の中身を見てみると…
バ~ン!!
不恰好な星の形やハートの形をしたクッキーが入っていた。
ひょっとしてあの子は俺に惚れている!
ババ~~~ン♡ !!
そう思った瞬間、あわてて蓋を閉めた。
次の日、学校でその子と会っても何だかぎこちない。
目も合わせられない。
そんな日が何日も続くのだが、クッキーはと言うと
食べずに大事にとってあった。
たまに蓋を開けては
「ムフフフフ…」とニヤける毎日。
1週間を過ぎた辺りからそろそろクッキーたちの元気が無くなってきた。
せっかく今まで大事にとっておいたのにおもいっきりほおばった。
決しておいしいとまではいかないが(1週間熟成させていたので)
ヒシヒシと彼女の愛を噛み締めた…
何日か経ったある日、たまたま掃除場所がその子と同じ場所になり
「この前あげたクッキーどうだった??」
と聞かれたので
「う、うんおいしかったよ」
急にオロオロしながら答えると。その横で聞いていた他の男子が
「うっそー俺のは砂糖が足りんかったよー」
と横から会話に入ってきた。
「え?なんでお前が言うの??」
どうやら後で聞いた話だがクラスの何人かの男子と女子に
自分で焼いたクッキーのテスターを依頼していたらしい。
どうやら本命は他にいるようだった…
そこで俺もテスターの内のひとりという事に気付く。
1週間たったクッキーのように脆くはかなくひと時の思い込みはそれで終わった…
それから二十数年経った現在、この前のたくあん(9月4日ブログ参照)をタッパーに詰めながら一人ニヤニヤ思い出し笑いをするかわいい俺だった。