ディルムンの都 | アカデミー主任研究員のブログ

ディルムンの都

こんにちわ 「砂漠の摩天楼」です。

何と、今度は2カ月のご無沙汰、いい加減にしろ!!ドクロ

という声が聞こえてきました。


5月、6月、7月でのニュースと言えば、第35回世界遺産委員会

日本から、

「平泉-仏国土(浄土)をあらわす建築・庭園及び関連遺産群」

「小笠原諸島」が登録決定となり、

(と言っても正式登録は12月、12月までに、

平泉・小笠原諸島共に最終の保全計画を

提出しなければなりません。この保全計画が認められて

はじめて正式登録です)

日本の世界遺産は16件になります。

世界的に見ると

オーストラリア、ブラジル、ギリシャが17件保有していて、

同率の11位、あと2件増えれば日本はトップテン入りします。


今度はどの物件が申請されるのでしょうか?


ここで、日本の新規物件2件を紹介しますが、まずは

ちがう話題から。

それが、表題の「ディルムンの都」です。

これは、バーレーン王国の世界遺産に関係します。

何で今、バーレーンなのか、

それは、今年の世界遺産委員会、

最初の開催予定地がバーレーンだった事に関係します。


中東ではじめての世界遺産委員会が開催される、

そして世界遺産もいよいよオイルマネーの餌食か!?

と思われていたところに、「ジャスミン革命」が勃発します。


チュニジアに起こった市民革命は、バーレーンにも飛び火します。

バーレーンは石油の埋蔵量は少ないのですが、

中東の金融センターを目指しており、経済的には

ある程度豊かでした。しかし、失業率が15%と高く、

立憲君主国のわりには、王様の権力が強かった。

こんな市民の不満が、一気に爆発して

暴動が勃発しました。

国情が不安定なのを受け、世界遺産委員会の開催場所が

バーレーンから、急遽、パリ、ユネスコ本部に変更されました。

アカデミー主任研究員のブログ-バーレーンの位置

バーレーンの位置


このバーレーン、唯一の世界遺産が

「カラット・アル・バーレーン-古代の港とディルムンの都-」です。

カラット・アル・バーレーンは、バーレーン北部の町で

ディルムン文化という、謎の古代文明の中心地だった場所です。


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「カラット・アル・バーレーン-古代の港とディルムンの都-」


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アーチなどに各時代の影響が感じられる

Uploaded from http://flickr.com/photo/21386962@N05/2638378123 using Flickr upload bot )


このディルムン文化が興味深いのです。


バーレーンが位置するペルシャ湾は、

その奥がイラン・イラクです。

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メソポタミア文明関連位置図

そしてイラクには、チグリス=ユーフラテス川が流れます。

つまり、メソポタミア文明発祥の地です。

そして、ペルシャ湾からインド洋に出て、

東に向かうと、そこにはインダス川があり、

インダス文明発祥の地とも近いのです。

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インダス文明に関係する地域と都市名

Simple map of Indus Civilization (or Harappa civilization) with few most important archeological sites. Redrawing from [http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:Indus_p.jpg fr.wikipedia] {{GFDL}})


この「ディルムン」という地名が初見されるのは

紀元前4000年末期のシュメール文化、楔形文字です。

今から5000年以上前、古代エジプト王朝の成立
より

古い時代から存在する町がディルムンです。


そして、紀元前2400年ころから段々栄えだし、

紀元前2000年ごろに最盛期を迎えます。


隆盛の要因は、メソポタミア文明、インダス文明

2大古代文明の物資の集積地としての経済効果と

言われています。


インダス文明の特徴の一つに“印章”があります。

インダスの特徴的な印章が、メソポタミア文明エリアで

発掘されている事で、両文明のつながりが見えてきます。

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インダスの印章

(Seals of the Indus Valley Civilization. British Museum. Personal photograph, 2005. {{GDFL}})


その両文明の交流に一役買っていたのが、ディルムン文明

ということです。

ペルシャ湾型とされるディルムン独得の印章が、メソポタミア文明

エリアで見つかることもあるみたいです。


私は、ディルムン文明の事をまったく知りませんでした。

学校で習った記憶もありません。

世界遺産の勉強をしてから初めて知りました。


きっとまだまだ知らない文明があるのでしょうね。


さらに、ここがノアの方舟伝説の舞台だ、

という話もあります。

ノアの方舟の話は、旧約聖書だけでなく

ギルガメッシュ叙事詩にも

シュメール人の洪水神話にも登場します。


ギルガメッシュ叙事詩はメソポタミア文明の

叙事詩ですし、シュメール人もメソポタミア文明を

構成した民族ですから、ディルムンがノアの方舟の

舞台になっても少しもおかしくありません。

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ノアの方舟 選民意識が感じられ、あまり好きではありません


また、“エデンの園”には4本の川が流れていました。

そのうちの1本は、ユーフラテス川ですから、現在の

イラク、さらにはその北、アルメニアあたりをエデンの園

があった場所とする説、そしてトルコのアララト山を

“ノアの方舟”が流れ着いた場所とする説も多いのですが、

ペルシャ湾にあった、という説も存在します。

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アウグスチヌス「神の国」より

四本の川が見えます。


このようなはじめて聞く情報を耳にすると、

楽しくなってきて、現地にも行ってみたい

と思いますよね。


さらに、さらにこの遺跡、未だ全体の25%程度しか

調査が進んでいないそうです。


それなのに、紀元前2400年のディルムン文化の遺跡から

ペルシャ王国、イスラム帝国、そして16世紀のポルトガルの

要塞まで、各時代にこの地を支配した、様々な文化の痕跡が

確認できるそうです。

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このアーチはイスラムの影響か?

( {{Information |Description= Qal`at al-Bahrain (english:) is an archaeological site located in Bahrain. It is composed of an artificial mound created by human inhabitants from 2300 BC up to the 1700's. Among other things, it was once the capital of the Di)


石の建造物恐るべし。


かたや、日本の平泉、もちろん木造建造物です。

三代藤原秀衡が建造した「無量光院跡」などは、

松林と田んぼしか残っていません。

木は「無常」です。

でも、どちらが良いかは言えませんよね。


“祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり”

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琵琶を弾く貴族


無常感は、日本文化の根源かもしれません。


次回は、この無量光院跡を含む

「平泉-仏国土(浄土)をあらわす建築・庭園及び関連遺産群-」

について考えてみようと思います。

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