でん子は、自分の着古しの仕事着をつくろっていました。まだ十二歳ですが、非常に利口で、ほがらかな子どもです。七、八歳のときから機(はた)織りの稽古をして、今ではおとなに負けないほど、上手になりました。
つくろっている仕事着は、ところどころ白くさめて、自然と、模様のようになっています。
「まあ、おもしろい。」
と思いながら、でん子の目は、急に生き生きとしました。仕事着の糸をていねいにときほぐして、黒と白の入りまじったぐあいを熱心に調べはじめました。
それからあとは、ご飯を食べるのも忘れて、一心に工夫していました。
四、五日たって、でん子は織り残りの白い糸を、ところどころ固くくくって、「これをこのまま染めてください。」 と染物屋にたのみました。
染めができると、くくり糸をといて、縦糸と横糸とに、うまくとり合わせて、機にかけました。織ってみると、でん子の思ったとおりに、紺色の地に、雪かあられの飛び散ったような、美しい模様が現れました。
できあがったものは、縞(しま)でもなければ、まだらでもありません。今までだれも見たことにない、めずらしい織り物でありました。
父母や近所の人たちは、目をみはって、
「これは、変わったものだ。めずらしいものを思いついたね。」
といって、ほめました。でん子は、いろいろな柄を、次々に工夫して織りあげました。
でん子の父は、「久留米がすり」と名をつけて、それを世に広めました。
「めずらしい柄だ。女の子が思いついたのだそうだ。」
「十二の娘が作ったとは、えらいものだ。」
世間では、たいそうな評判です。そのうちに、織り方をならいたいという者が、出てくるようになりました。
(第五期 国民学校修身教科書 初等科 二)
