馬鹿馬鹿しいことは百も承知である。
それでも、その考えが頭から離れない。
甥は狐絡みで何かしたのではないだろうか。
はっきりとはわからない。
ただ、甥が事故に遭って意識不明のとき、私の頭の中にふっと湧いた。
「これを乗り越えたら甥は狐憑きになる」
悪い意味の狐憑きではなく、守護する存在としての憑き神である。
意識が戻ってからは、「歩けるようになったら、甥一人か、もしくは兄と二人で京都の伏見稲荷に御礼参りに行くよう言わないと…」と思った。
「もし京都まで行けないのなら、近くの稲荷神社でもいい…」
とにかく、お稲荷さんと狐が気になってしょうがない。
ただ、今はもう甥に狐は憑いている気がする。白い大きな狐が。
いや、憑いているというより、憑くかどうか甥の言動を見定めようとしている。
昔あった狐の襟巻きの巨大版のように、甥の首肩頭を囲っている。
狐はシビアである。
一旦憑いても、調子に乗って勘違いすると、憑いて守るべき価値がないと見なし、容赦なく切り捨てる。
このことを伝えたいと思うが、残念ながら兄からも姪からも連絡はない。
甥自身に既に謙虚で前向きな心が備わっていれば良いのだが…