30代くらいで恰幅のいい方だった。
その店は、店主が一人でやっていて、常連客が自ら準備をするのが暗黙の了解になっていた。
それを知らないで、勝手がわからず戸惑っている私に、その男性は優しく教えてくれた。
注文の品が出てきて食べ始めると、男性は時折、話かけてきた。
私も男性と話がしたかった。
しかし、丁度そのときテレビで流れていたニュースに興味があり、内容を頭に入れることに必死で、つれない返答をするだけになってしまった。
そうこうしているうち、男性は食べ終わり、笑顔で「お先に」と挨拶して出て行った。
その男性のことがしばらく頭を離れず、その後も何度かその店に行ったものの、その男性には二度と会えなかった。
そのとき、ニュースよりも男性を優先しなかったことと追いかける勇気を持たなかったことを、未だに後悔している。

先日、安美錦関が婚約した。
巡業を見に行ったとき、話し掛けるチャンスは何度もあった。

でも勇気がなかった。
遠くからモジモジしながら見ているだけだった。
「来年の巡業こそは…」と思いつつ、話し掛けられないまま数年が過ぎた。
そして、婚約発表。
数週間前、夢を見た。

夢占いで調べたら、
「別れを暗示。これも経験と割り切れば、きっと将来の糧になります」とあった。
そのときは、「付き合ってる人もいないし、関係ない」と気にしなかったけど、
さっき、ふと、「安美錦関のことか」と思った。
安美錦関とは、もちろん何もないけど、
声を掛ける勇気を持たなかったことの後悔を「将来の糧」にしろという意味かなと思った。
「陰でお慕いしています」では、気持ちは伝わらない。
砕けてもいいから当たらなくては。
次からは、そうする!