ABS(Anti-lock Braking System)
アンチロック・ブレーキ・システムは、
ブレーキを作動した時に、タイヤの回転が
止まってスリップ、滑走状態になることを
防ぐ機構を持つブレーキです。
実際には、タイヤの回転が止まる程の強い
制動力では、摩擦係数が小さくなるので、
摩擦係数が最大になるといわれる
スリップ率 0.2 になるように制動力を
制御する。
参考文献 1)では、制駆動力 Fi とスリップ率 s の関係は
図 1に示すようにスリップ率 +- 0.2 で最大最小になると
考えられている。スリップ率 s は、下記の式で定義される。
s = (rω - u)/max(rω, u)
u; 速度(m/s)、r; タイヤ半径(m)、ω; タイヤ回転速度(rad/s)、
駆動時; s > 0, rω >= u
制動時; s < 0, rω < u
参考資料 2)では、制駆動力 X を求める式は、
スリップ率 s と路面摩擦係数 μ 以外の係数を
それぞれ定数 C1、C2、C3 として整理し、
さらに両辺を μ で割ると、図 2に示す式で表される。
s/μ と X/μ との関係は、図 2 のように、
路面摩擦係数 μ によらず、1本の曲線となる。
スリップ率 s は次式で表される。
s = (u - rω)/u
制動時; u >= rω
0 =< s =< 1, u > 0
タイヤなど同一車両で、路面摩擦係数が μ1、μ2 の
スリップ率 s と制駆動力 X との関係は、
図 3のように表される。
路面摩擦係数毎の曲線は相似形であることから、
s1/μ1 = s2/μ2 であり、
R = X1/s1 = X2/s2 である。
図 1と図 3のスリップ率と制駆動力との関係には、
大きな違いがあると考える。
図 1の制駆動力ではスリップ率 0.2 で最大となるが、
図 3の制駆動力では摩擦係数が小さくなると
それに比例してスリップ率も小さくなる。
雪道走行での体感では、図 3の制駆動力のように
摩擦係数 μ が小さくなるとスリップ率も
小さくなっているような、ブレーキを踏み、
制動が効き始め、もう少し効かせたいと
僅かに踏み込むと滑り出し、
ブレーキ操作が微妙で難しいと感じる。
また、雪道では一旦スリップし始めると、
ブレーキペダルを戻してもスリップしたままで
グリップしないことが多々生じる。
4WD の微妙なブレーキ操作では、
右足アクセル一定踏み、左足ブレーキを行うと、
とても安定した制動効果を感じる。
このように感じる主な要因は2つある。
1つは、ブレーキペダルを踏み込んで
制動力が働くまでに僅かな時間遅れが生じる。
急ブレーキでは強い力が働くので、
僅かな時間遅れはほとんど判らないが、
雪道での弱いブレーキでは効き始めを感知し難く、
ちょうど良い制動力を感じた時には時間遅れで
少し強い制動力に定まる。
少し弱めても時間遅れで制動力が弱まり、
ちょうど良い聖動力を感じた時には
また時間遅れでもう少し弱い制動力に定まる。
弱いブレーキ操作では、この時間遅れは
とても厄介な問題だ。
もう1つはタイヤの制駆動力が
タイヤの回転モーメントとして
タイヤの回転を元に戻すには
小さくなっていることが考えられる。
最近の車は 16インチ以上のタイヤを
装着している。タイヤは結構重い物で、
タイヤ交換はかなり重労働です。
重いタイヤを回転させるには大きな力が
必要になる。
回転モーメントとして充分な制駆動力が
雪道でスリップしたタイヤに働かなければ、
スリップ率を小さくすることができずに、
過大なスリップ率状態が続き、
ブレーキは効かない。
ブレーキの整備不良もタイヤの回転を妨げる。
ブレーキの引き摺りはその分タイヤの回転を妨げ、
ABS の機能を阻害する。
最近の衝突被害軽減ブレーキは色々な制御理論、
方法を採用して、様々な環境条件下で
機能するように発展している。
それでも、ブレーキ操作との時間遅れ、
タイヤの回転モーメントの下限は
ABS の機能を制限するので、
ABS は止まるまで踏みっぱなしで
良いわけではないと思う。
下記の参考文献の路面摩擦係数に関する所に
興味があったので、車体の運動やブレーキの
制御に関してはまだ理解できてません。
===== 参考文献 =====
1) 池田裕一,
非線形制御理論を用いた車両速度とスリップ率の追従制御,
日本機械学会論文集, Vol.80, No.812 (2014)
2) 佃 駿甫, 塩澤 裕樹, 毛利 宏,
路面状況に対応可能な衝突被害軽減ブレーキの提案,
日本機械学会論文集, Vol.84, No.860 (2018)



