映画『国宝』を観に行った。
(※若干のネタバレがあります)
劇場公開から既に半年近く経つ今頃、ようやく観に行った。
自分はミーハーな人間なので、ノーマークな映画でも世間で流行っていればとりあえず観に行くのだけど、この『国宝』は今の今まで腰が上がらなかった。
その理由は明らかで、自分は歌舞伎をほとんど知らないからだと思う。
興味がゼロというわけでもないのだが、特にきっかけもないから今まで歌舞伎の演目を観に行ったこともなかった。
だから『国宝』も自然と後回しにしてしまっていたんだと思う。
今回観に行ったきっかけは「最近映画館で映画観てないなぁ…今なにやってるっけ…うーん、国宝観に行くか」くらいのものだった。
それがこんなに素晴らしい映画だとは知らずに。
“1人の男が歌舞伎役者として人間国宝になるまでの物語”
一文に表せばこんなあらすじだけど、すごく色んなものが詰まっていた。
色んなものといっても、恋愛や青春や奇想天外な物語ではない。ずっと中心に歌舞伎があって、苦悩し切磋琢磨する人生を描いていた。
その人生に影響を与えるであろうことは必要最低限に描かれて、ひとつ山を越えると次の展開に切り替わる。だからこちらもある程度考察しながら観ることになる。
しかし大事な場面はしっかりと丁寧に描写される。緩急の付け方が上手い監督さんなんだなと思う。
父の死に様、初めて万菊と対面するシーン、万菊の演技に衝撃を受ける場面、代役本番前の化粧中のやりとり、屋上で踊りながら自暴自棄になるシーン、最後の鷺娘の演技
約3時間と長めの上映時間だけど、最初から最後まで印象に残ったシーンがこんなに多いことはすごい。
吉沢亮さんと横浜流星さんの演技も素晴らしかった。
専門的なことは分からないけど、物凄く稽古を積んで努力した演技なんだと感じた。
かっこいいし、美しかった。
市川團十郎さんが彼らの演技についてコメントしている動画で、専門的に見れば気になる部分もあれど映像としてあれだけ美しく演技を見せられることは素晴らしいというようなことを言っていて、本当にその通りだと思う。
とても月並みな感想になるが、この『国宝』で歌舞伎に興味を持てた。実際に観に行きたいと思った。
もっと言えば日本の伝統芸能全体に興味を持つきっかけになった。
日本にはこんなに素晴らしいものがあると気づかせてくれた映画だった。