幼少期、塗り絵をして遊んだという人は少なくないだろう。私もその1人だ。しかし、普通と違っていたのは、我が家には塗り絵のルールと禁忌があったことだ。


我が家の塗り絵ルールその1

塗り絵をする時は、最初に縁を全てなぞる


我が家の塗り絵ルールその2

塗り絵をする時は、薄い色から塗る


我が家の塗り絵ルールその3 

塗り絵をする時、色鉛筆は一方方向にしか動かしてはいけない


我が家の塗り絵禁忌その1

縁からはみ出てはいけない


我が家の塗り絵禁忌その2

塗り絵をする時、色鉛筆は色々な方向に動かしてはいけない


ルールと禁忌を合わせると5つあり、それを破ると酷く父に怒られた。

「こんなの正しい塗り絵じゃない!」

「そうやってするなって言ったやろ!」

「さっき教えたことが何でできんのん!」

時には塗っていた塗り絵を全て消しゴムで消されたり、捨てられたりすることもあった。こうやって怒られながらする塗り絵は楽しくなってなかった。ただただ怒られないように、緊張と不安に押しつぶされそうになるだけの時間でしかなった。


妹が生まれて、塗り絵をするようになってからは、それに加えて、妹と比べられることも増えていった。

「色の組み合わせ方が綺麗やな!それに比べてサバイバー(私)は‥‥‥」

「こんなに上手に塗れるなんてすごいなぁ!お姉ちゃんに勝っとるなぁ!」


緊張と不安の中塗っても、比べられるだけの塗り絵なんてちっとも楽しくなかった。苦痛の時間でしかなかった。母に「嫌だ」と伝えても、「お父さんが教えてくれよんやから!ちゃんと教えてもらいな!」と私の助けを求める声は届かなかった。


今も私は塗り絵が嫌いだ。