ドンっ!バンっ!

今日もいつもと変わらず、大きな音が鳴り響く。

いつものように祖母と母が口論になり、最後は大きな音をたてて、お互いが部屋を出ることがお決まりだ。

口論の内容は、まだ幼い私には分からないが、幼稚園の先生が言っていた「言ってはいけない言葉」「相手を傷つける言葉」をお互い言い合っているということは理解できた。


祖母と母が口論になるのは毎日のこと。物心ついた時には既に毎日のように言い争い、時には皿やフライパンなどの物が飛び交うこともあった。そんないつもの恒例行事が始まると祖父も父も私を置いて何処かへ隠れてしまい、1人で2人のやり取りを見ることになる。


そんな時、私はずっと疑問だった。

幼稚園では言ってはいけないと言われていた言葉を母と祖母が言い合う。ものは投げてはいけないと幼稚園では教えてもらったが、家では飛び交う。その光景が疑問で仕方なかった。


一体、母たちのやり取りが正しいことなのか、幼稚園で教えてもらうことが正しいのか分からなかった。わからない私は、鬼のような顔、大きな声で言い合う2人の姿を声を殺して泣きながら見続けることしかできなかった。そして、この経験は大人になった今でも私を苦しめている。