こんにちは、サバイバル・アンナです。

 

 

Center for Independent Studies(オーストラリア)がアップしたミアシャイマー教授の講演から、切り抜き要約したパート2です。動画の22:25から48:22です。

カッコ内は個人的に加えた補足です。

 

 

<切り抜き要約始まり>

 

 

4月1日にイスラエルによるシリアのイラン大使館爆撃が起きるまで、イランとイスラエル、イランと米国は(代理を使った)影の戦争を行ってきた。重要な点は、米国もイランも影の戦争がエスカレートすることは望んでいなかったことだ。エスカレートを望んでいたのはイスラエルであり、これまでも幾度となく、米国とイランを戦争に巻き込む機会を狙ってきた。だから米国への事前通告なしに行われた4月1日の爆撃は、米国を激怒させた。

 

イランが4月14日の報復攻撃を決めた際、米国とイランは仲介者を通して事前協議し、反撃を最小限にとどめることに合意した。事態をコントロールするため、オマーンを経由した非公式なホットラインさえ設けられた。米国はイスラエルの防御にも深く関わり、おそらく、イランからのミサイルとドローンの約半分は米国が撃ち落としたと見られる。さらに大きな反撃を求めるイスラエルを米国は抑え、結果的に4月19日のイスラエルの反撃は、イスファハン付近のレーダー1機の破壊で終わったのである。

 

 

これまでのイスラエルの軍事的抑止力は、エスカレーション・ドミナンス(戦いをエスカレートさせ、敵の攻撃よりさらに大きな報復を行うこと)にあった。例えば2006年7月12日にヒズボラがイスラエル人数名を殺害して人質を取った際、イスラエルはレバノンに大規模爆撃を行った。ヒズボラのトップであるナスララは後日、「イスラエルの反撃規模を知っていたら、ヒズボラ側の攻撃許可は出さなかった」と語っている。

 

しかし、4月1日・14日・19日に起きたことや、イスラエル北部のヒズボラとの交戦を抑えられていない状況は、イスラエルの抑止力が深刻な問題に直面していることを示している。ハマス、フーシ派、ヒズボラ、イランの戦闘能力は上がってきており、いずれイスラエルに大打撃を与えるレベルに達する時が来るだろう。

 

2005年に当時のシャロン首相は、危険な状態にあったガザからイスラエル人入植者と軍の撤退を行った。しかし今再びイスラエル軍はガザに留まり抜け出せない状態にある。そしてさらなる問題は、イスラエルが事実上パーリア国家(国際社会から疎外された国)になってしまったことである。米国と世界中のキャンパスでおきていることを見れば、国家としての名声が地に堕ちたことは明らかだ。国際司法裁判所は南アフリカのイスラエル提訴に対し、「イスラエルが大量虐殺を犯している可能性があると考えるに足る証拠がある」と発表している。最近の米国内の調査では、民主党員の実に56%が、イスラエルは大量虐殺を犯していると考えると回答している。

 

 

米国が今最も望まないことは、中東でのさらなる戦争、イランとの戦争だ。我々に中東地域の和平が必要なのは、米国が東アジアに軸足を移すべき時だからだ。米国にとっての最大の脅威は、中国である。中国を抑え込まねばならないのに、我々はウクライナと中東に足止めされている。

 

中国とロシアは中東諸国との関係を深めつつあり、米国と中東諸国の関係が悪化すれば、これらの国々をますます中国・ロシア側に近づけることになる。米国はサウジアラビアとイスラエルとのアブラハム合意に向けて動いていたが、今回ガザで起きたことにより白紙となってしまった。

 

イランは核兵器保有の一歩手前の段階に来ている。イスラエルによるイラン大使館爆撃が、核兵器開発へのさらなるインセンティブをイランに与えてしまっただろう。また、イランがロシア・中国との結びつきを深める結果を招き、今後我々がイランに圧力をかけることが難しくなるかもしれない。すでにイランへの経済制裁は以前ほどの効力を持たなくなってきている。

 

 

10月7日以降の世界が、米国とイスラエルにとって望ましくない方向に変わってしまったことは明らかである。

<終わり>