そんなとき美容師を辞める決意をします。
もう、辞めよう。
疲れた。
考えられる策はすべて講じた。
我が美容師人生に一遍の悔いはなし…
これ以上お店に迷惑もかけられないし、イライラさせるのもイライラされるのにも疲れた。
でも最後に、なにかの霊に取り憑かれてるかもだから霊能者のところへ行って、視てもらってから辞めよう。
先祖の霊や動物霊、浮遊霊に地縛霊、生霊かもしれないから…
そうだ、霊だ、霊に違いない…
『あのぅ、私に悪霊が憑依してると思うのですが憑いていませんか?』
『はい、憑依していません(ニコニコキッパリ)』
『ほら、なにか縁起が悪いものが部屋にあるとか??』
『なにもありませんよ(ニコニコキッパリ)』
『先祖の霊はどうでしょう?』
『なにもおっしゃってませんよ(ニコニコ)』
『ではなぜ顧客化しないのでしょうか?』
『鎧を着て木の陰に隠れていては見つけてもらえませんよ!(ニコニコ)』
『美容師を辞めようかと思っているのです』
『心の綺麗なお客さまが集まりますから辞める必要ないですよ(ニコニコ)』
『いや、集まらないんですよ、ザルなんですよボク』
『大丈夫ですよ(ニコニコキッパリ)』
具合的なアドバイスはありませんでしたが、鎧を着て隠れている、という言葉がわかる気がしました。
そして決断します。
『よし。決めた。どうせリピートしないんだし、辞める覚悟までできたんだから、好きなようにカットしよう。カウンセリング?カット中の会話?服装?どうでもいいよ、どうせ功を奏さなかったんだし。好きな髪型にしてやろう!そして辞めよう』
ヤケクソです。
一応カウンセリングはしますがお客さまの意向に添うというより提案と形にしました(好きなように切りたいので)。
そして、カット中はカットに関する会話以外は一切なしです。
会話してもリピートしないし疲れるだけなのでやめました。
お客さまのためではなく、自分のためにカットをするようにしました。
自分を大切にして、カットを楽しむようにしたのです。
人の為と書いて『偽り(いつわり)』と読みます。
私はカットを楽しんでいませんでした。
デザインを楽しんでいませんでした。
クリエイティブに生きていませんでした。
このヤケクソが大切なことを教えてくれました。
私は今、カット講習を通して、技術的なことだけでなくメンタルの面な顧客化する方法も教えています。
そこでいつも言うのは、一番大切なことはカットを楽しむこと、です。
技術的に楽しめないのであれば、得意なスタイルを持つことです。
腕を磨くのです。
そして、カットを楽しむ。
自分が楽しければ、相手(お客さま)も楽しいのですから☺️