市場原理に立脚しない再生エネルギー固定価格買取制度(FIT)のほころび
[HRPニュースファイル1146]より転載

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http://hrp-newsfile.jp/2014/1747/

文/幸福実現党岐阜県本部政調会長 加納有輝彦


◆全量買い取りが困難となった電力各社

太陽光など再生可能エネルギーでつくった電気について、電力会社が買い取りを中断する動きが広がっています。

九州電力が9月下旬から、発電事業者との新規契約を保留しているほか、北海道、東北、四国、沖縄電力4社も当面保留すると発表しました。

電力会社は保留の理由として、申請通り受け入れると安定供給に支障をきたすと説明しています。

太陽光は天候に左右され、晴れた日の昼間に発電量がピークになります。これをすべて受け入れると各社の送電網の容量を超え、周波数が変動して工場の操業などに悪影響が出る恐れがあるとしています。(日経10/3)

九州電力の瓜生道明社長は9月30日の記者会見で、「安定供給のためには、保留(制限)せざるを得ない。苦渋の決断だ」と述べました。

ただし、一般家庭からの買い取りは沖縄電力を除き従来通り継続します。

2012年に施行された再生可能エネルギー特措法は、電力会社に全量の買い取りを義務付けているのに、なぜ中断できるのでしょうか。

それは当該法律に「電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがあるとき」は受け入れを中止できると例外規定あり、各社はこれを断る理由にしています。


◆再生エネルギー買い取り負担額が4倍以上に

経産省は30日に開いた審議会で、電力各社の受け入れ可能量を検証する有識者会議を10月中に設置することを決めました。年内にも各社の受け入れ可能量を算定し、余力がある場合は新規受け入れを要請します。(毎日9/30)

また、再生可能エネルギーを用いる発電設備がすべて運転を始めると、FITに基づく電力利用者の負担額が一般家庭で現状の月額225円から935円と現在の4倍以上に増える試算を公表しました。(日刊工業10/1)

経産省は再生エネルギー設備の認定量に上限を設ける総量規制や、買い取り価格の算定方法の見直しなどを行う方向で検討に入りました。

◆このような事態になることは分かっていたこと

太陽光など再生可能エネルギーによる電力の受け入れを制限している九州電力は30日、制限を発表した9月24日から26日までの3日間に、送電線接続の申請をしている再エネ事業者らから計約6000件の問い合わせがあったことを明らかにしました。制限内容のほか、自社が対象になるかどうかの確認が多かったといいます。(読売10/1)

このように多くの民間事業者が事業計画の変更を余儀なくされる事態に、経産省、電力会社の責任を問う声も一部マスコミ等から上がってまいりました。

一方で、このような事態になることは、容易に想定できたとする専門家も少なくありません。

◆震災後の空気の中で全ては決定された・・・

菅首相(当時)は、東日本大震災、福島第一原発の事故を経て、自らの責任を反省する事より、反原発・脱原発を政権延命のための千載一遇の旗印としました。

一国の総理というより、まるで一市民活動家の風体で喜々として推進した菅首相(当時)のFIT構想、それを計画性なしに大賛成した一部マスコミが、今になって経産省、電力会社の責任を問う事は許されないと思います。

一部の参入事業者が巨額の利益を得る一方で、一般家庭で4倍以上に跳ね上がる可能性のあるFITに関る電気料金負担は、消費増税、円安と相まって、家計を圧迫し消費活動を鈍らせる要因となります。

また、中小企業にとってもこれ以上の電気料金負担増は、企業存亡に関る事態になってまいります。

一刻も早く、政府は、FITに関る電気料金負担を減額し、安全と認められた原発の再稼働を主導し、電気料金の安定化を図るべきです。
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