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より転載
イラクの過激派「イスラム国」を空爆したアメリカの「本気度」に疑問
2014.08.09
アメリカ軍がこのほど、「米国人の安全保護と人道目的」との理由から、イラク北部を制圧するイスラム教スンニ派の過激派「イスラム国」に対し、限定的に空爆した。アメリカによるイラクへの軍事介入は、2011年以来であり、軍事介入を自制してきた従来の外交方針の転換を意味する。
オバマ大統領はこれまで、イラクのマリキ首相から空爆要請を受けてきたが、断り続けてきた経緯がある。しかし、「イスラム国」が、米軍が展開する同国北部の都市アルビルに接近した上に、キリスト教徒や多数の女性への迫害が相次いだことから、オバマ大統領は軍事介入の決断を迫られたものと見られる。
「イスラム国」は、イスラム教に基づく国家建設を目指す武装集団のことを指す。国際テロリスト組織「アルカイダ」から派生した同集団は、昨年のシリア情勢の悪化に乗じて勢力を拡大。イラクとシリアをまたぐ地域で、キリスト教徒や、クルド人が信仰するヤジディ教などを「ジハード」の対象にし、数百人の女性を拘束。多数の女性が"戦利品"として奴隷にさせられたという。
こうした残虐な行為が横行するのも、アメリカが、「イスラム国」を放置し続けたためだ。オバマ大統領は、凄惨な事件が浮き彫りになったことで、結果的に「米国人の安全保護と人道目的」という口実を得て、空爆に踏み切ったという後手に回った印象もぬぐえない。空爆だけでは、イラク国内にゲリラ的に侵攻している「イスラム国」に対して効果的とは言えない。
また、今後アメリカがテロリスト掃討を「継続的に行うか」も疑問だ。
明らかな人道的迫害があるにも関わらず、頼りになるべき国連安全保障理事会も7日、「イスラム国」に対し、「最も強い言葉で非難」とし、国際社会の支援を求めた。だが、同集団を「人道に対する罪」と指弾したものの、国連は、軍事介入の必要性を検討する形跡すら見られない。
国際社会は、人道的迫害を前に、何もしない「不正義」がまかり通っていることに気づくべきだ。当然、アメリカも、「世界の警察官」に立ち返るべきであることは言うまでもない。(山本慧)
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